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2022年版「世界移住報告書」刊行 COVID-19下の移動制限にも関わらず、世界的な避難民は増加

国際移住機関(IOM)はこのほど、旗艦刊行物である『2022年版世界移住報告書』を発表した。この中で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行による渡航制限により世界中で移動が停滞したにも関わらず、災害、紛争、暴力による国内避難民が劇的に増加していることが明らかになった。

アントニオ・ヴィトリーノIOM事務局長は、「我々は現在、人類の歴史でこれまで見られなかったパラドックスを目の当たりにしています。何十億の人々がCOVID-19によって外出を制限されている一方で、何千万もの人々が母国で避難を余儀なくされています。」と語った。

世界の航空旅客数は2020年に前年比60%減少し、18億人になった一方で(2019年には45億人)、同時に災害、紛争、暴力による国内避難民は4,050万人に増加した(2019年は3,150万人)。

本書は、IOMの『世界移住報告書』シリーズの11冊目であり、世界中の最新データを元に、主要な移住の傾向と、世界の移民政策において議論されている課題についても言及している。

「今年の報告書は、これまでの『世界移住報告書』とは異なります」と、本書の編集者であるマリー・マコーリフは述べている。

「この2年間に移住・移動に関して非常に多くのことが起こりました。本書では、主要なデータ、調査、分析をまとめて、COVID-19によってこれまでの長期的な傾向がどのように変化し、世界中の移民がどのように影響を受けたかを分析しています。」

本書によると、国際移民の数は、1970年の世界の8,400万人から2020年には2億8,100万人に増加したが、世界の人口増加を考慮に入れると、国際移民の全世界の人口に占める割合は2.3%から3.6%までしか増加していない。世界中のほとんどの人(96.4%)は、自分が生まれた国に住んでいるのが現状である。 2020年の国際移民の数は、COVID-19がなかった場合の想定数よりも、約200万人少なかった。

今回の『世界移住報告書』は、デジタル資料も拡大させた。オンライン双方向プラットフォームは、ユーザーが非常に視覚的で興味深い方法で主要なデータを検索し、利用することを可能にした。 2020年版『世界移住報告書』は、2021年の国際年次報告書デザイン賞で金賞を受賞した。

教育者向けのオンラインツールキットは、世界中の教員用に、移住と移民の基礎的な事柄に関して、バランスが取れ、正確で興味深い学習教材を提供するために開発された。

『世界移住報告書』は、事実確認ができる重要な情報源になり、さまざまな移住に関するフェイクニュースを正していくのに活用されている。 2022年版には、移住に関する誤った認識を打ち破るのに役立つ、新しい簡易的なファクトチェッカー(事実確認)のためのツールキットが含まれている。

本書は、データ分析に加えて、より詳細な情報を必要とする読者のために、移住と緩やかに進行する気候変動、平和と開発の人の移動との関係、移動の経路における人身取引、COVID-19の影響、移住に関する誤情報、誤情報があふれる時代における移民の貢献、人工知能と移住、といったトピックスなどを網羅している。これらは、移住分野の専門家と一般の聴衆の双方にとって時宜を得た、適切なトピックスと言える。

 

2022年版『世界移住報告書』本文や、関連のコンテンツはこちら(本部英文サイト)からご覧いただけます。

2022年版『世界移住報告書』オンライン双方向プラットフォーム (Interactive - World Migration Report 2022) はこちら(本部英文サイト)

 

2022年版『世界移住報告書』刊行に寄せたヴィトリーノIOM事務局長メッセージ(英語)