このページでは、IOMの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した取り組みについて紹介しています。
新型コロナウイルス感染症に対するIOMの対応計画
IOMは2020年4月15日、4億9,900万ドル規模の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)グローバル戦略的準備と対応計画」(Global Strategic Preparedness and Response Plan, SPRP)の再更新版を発表しました。140カ国以上の国々における、きわめて重要な予防、対応、そして回復を支援するための計画です。IOMは、新型コロナウイルス感染症のさらなる感染拡大を防ぐため、また、保健制度を支えてさらなる状況の変化に対応するために、経済的、技術的、実務面の資源を必要とする国々を支援します。
この計画には世界の全地域における、以下のような幅広い活動が含まれます。
- 新たな状況下での人道支援
- 国境を越えた連携
- 感染症の調査・監視に関する政府職員の能力強化
- 入国地点における手洗い設備の設置および改善
- ケースマネジメント支援
- 国内および国境を越えた人の移動の追跡調査とマッピング
- 安全と衛生を考慮した避難施設の改善、生計手段の維持
- 特に移民、難民、避難民を対象とした、健康を保つための情報提供
IOMの計画は、世界保健機関(WHO)の「新型コロナウイルス感染症グローバル準備と対応計画」(COVID-19 Global Preparedness and Response Plan)および国連人道問題調整事務所(OCHA)により取りまとめられた「機関間常設委員会新型コロナウイルス感染症グローバル人道支援計画」を補完し、これに沿うものです。
IOM新型コロナウイルス感染症(COVID-19)グローバル戦略的準備と対応計画はこちら(英文PDF)
IOM COVID-19 Global Strategic Preparedness and Response Plan (SPRP)
- フィールドにおけるIOMの取り組み
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IOMは2020年1月以来、WHOの助言に沿って、世界各地で新型コロナウイルス感染症の問題に対処してきました。最近の例ではエボラ出血熱の流行への対応など、長年の経験を活かしながら、グローバルな保健危機が人の移動に関する甚大な危機になっている状況において、多くの政府とともに活動し、人命を救うために活動しています。
IOMの戦略的対応は、最も弱い立場にある人々に支援を届けることと、このパンデミックに人の移動という観点から取り組むための対応能力を向上させることに焦点を置いています。具体的な活動には以下があります。
- リスクの伝達とコミュニティ活動
コミュニティのネットワークを活用し、法的地位に関わらず、移民などの最も脆弱な人々が文化的に適切な方法で公衆衛生の情報へアクセスできるようにする。こうした活動は、アフガニスタン、バングラデシュ、ギリシャ、イエメンなどで実施されている。ギリシャでは、本土にある移民のためのキャンプでの情報共有セッションや政府からの情報の翻訳、その他の物資を提供。
- 国境を越えた連携
国境をまたがる連携や、出入国地点(空港、港湾、陸路での国境)における保健調査・監視能力の強化を、アフガニスタンのパキスタンとイランとの国境など、多くの国で実施。 IOMは毎日、「世界の移動制限の概要」(Global Mobility Restriction Overview)、および国レベルでの制限のマッピング(Country-Level Restriction Mapping)を提供し、最新の複雑な移動制限の内容を伝え、職員の活動を支援。
- 危機的状況における連携
関係者間での情報の共有を円滑にするための調整。ギリシャやマルタ、ノルウェーなどの欧州諸国では、IOMは今後の対応のために政府と緊密に連携。ベルギーでは、危機への対応において誰ひとり取り残されることがないよう、IOMは政府と連携し危機マネジメントチームを設置。
- 政府職員への研修
IOMはエボラ出血熱による保健危機対応の際すでに、標準作業手順書 (Standard Operating Procedures)に基づいた研修を、ギニア、コンゴ民主共和国、セネガルで実施。これを新型コロナウイルス感染症への対応に活用することや、バーチャルで行うことが可能。
- 人の移動のマッピング
WHOと連携し、渡航制限や入国地点、航空会社、取り残された移民の状況などの情報を組み合わせて示すことで、ニーズの把握と対応策に優先順位をつけて備える。こうした活動は、モンゴル、イラク、アフガニスタン、ルワンダ、タンザニアなどの国々で行われてきた。弱い立場にいる人々が速やかに対応を受けるためには、政府と現場の対応チームが人の移動とそれに関わる様々な力学についてよく理解することが重要。
- 調査・監視の強化と入国地点での衛生設備の整備
感染リスク低減のため、IOMは水へのアクセスと衛生対策を強化。アジア全域で、IOMの健康診断を受ける移民がアメリカに向かう際は、関係情報が提供され、手指消毒液とティッシュを受け取る。
渡航制限の強化など、パンデミックがIOMの日々の活動に及ぼす影響に関して、職員、協力機関、そして全ての受益者の安全を継続して確保するために綿密なアセスメントを実施。我々の活動が人々を第一に考える包摂的なもので、支援する人々に害を及ぼさないようにするために、IOMの全活動を通じて優先されるのは、新型コロナウイルス感染症対応のあらゆる活動で保護の視点を取り入れることです。そのために、以下の対応がされています。
- 難民の再定住プログラムの一時的な停止 ←2020年6月再開
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との調整のもとでプログラムを一時的に停止していたが、2020年6月に再開。再定住は多くの難民の命を救う手段のため、IOMとUNHCRは、安全な方法で移動が継続されるよう各国政府と連携。
- 移住のための健康診断プログラム、査証申請プログラムの規模縮小または停止。家族統合および人道的査証プログラムの縮小
活動を継続している地域では、新型コロナウイルス感染症に対応する標準作業手順書を用意し、移民への保健教育やカウンセリング、渡航前の健康診断を強化するなどの予防策を採用。
- 移民へのバーチャル・カウンセリングと移民団体へのバーチャル・トレーニング
多くの欧州諸国では、IOMが遠隔コミュニケーション機能を用い、特に帰国を希望している移民に現在の状況と移動制限について情報提供。
活動内容を調整しながら、IOMは刻々と変わる状況を活動地域で把握しており、状況が整い次第活動を再開できるよう、キャパシティを維持して準備しています。
- IOMのメッセージ
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新型コロナウイルス感染症の流行は、医療・保健の問題であるだけでなく、国境管理制度と移住管理の双方から見た人の移動性と、紛争や自然災害によって避難を強いられている人も含めたすべての移動している人々の状況に前例のない影響を及ぼしています。IOMは、WHOや国連移住ネットワークに所属する機関などと緊密に協力しながら、エボラ出血熱への対応等の過去の経験を活かして、移住保健の視点が国連システム全体に共有されるよう活動しています。
IOMは、新型コロナウイルス感染症が、広範囲に長期的な人道的・社会経済的影響を与え、特に移動する人々には更なる影響を与え得ることを念頭に対応しています。最も大きな影響を受けた社会においても、短期的には、移民は他の市民と同様、あるいはそれ以上の脆弱性にさらされています。混雑した住環境、短期雇用、不安定労働、公的医療サービスやその情報への限られたアクセス、経済的な事情で隔離などの措置が難しいなど、移民は様々な困難を抱えています。
全体的な影響は比較的小さい国々でも、避難民キャンプやそれに類する環境では感染症にかかる危険が常に高く、紛争下の環境に至っては、状況を確認することにも支援を届けることにも困難が伴います。
移民を始めとした脆弱な人々への支援によって、かえって害を及ぼさないようにしながら、そうした人々の困難を最低限にし、公衆衛生のリスクを低減させることが必要です。コミュニティの安全を守る際には、全ての人々の基本的人権を尊重しなければなりません。正規か非正規かに関わらず、移民は保健の情報、検査、治療にアクセスが可能であるべきで、それによって対策チームの接触者追跡調査やコミュニティ対策に移民が含まれることになります。
IOMは新型コロナウイルス感染症への対応において、移民を包摂したアプローチを採る必要性を強調します。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の精神のもと、法的地位に関わらず、移民の特別なニーズと脆弱性に対応するよう各国に求めます。全ての国々での対応計画が移民を包摂しなければ、新型コロナウイルス感染症との戦いには勝利することはできないでしょう。
この危機において、国連移住ネットワークの宣言にもあるように、移民や難民、庇護申請者などの特定の人々に向けられる差別について警戒しています。IOMは不正確な情報や差別的な表現が広まることを懸念します。そうした行為があると、人々が症状があっても訴えなかったり、感染経路を明かさなくなったりしてしまい、結果的に適切な治療を受けることができなくなるだけでなく、更なる感染を防止する努力をも阻むことになります。関係政府や機関は、感染源や感染拡大に関連した外国人嫌い(排外主義)に対峙するためにあらゆる方策を採らなければなりません。ソーシャル・ディスタンシングにより、長期的な社会的一体性を犠牲にすべきではありません。
- デマと闘うためのグローバル・イニシアチブ - Verified(ベリファイド)
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IOMは国連が立ち上げた、信頼できる正確な情報を増やし、普及させることにより、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)にまつわるデマの蔓延と闘うためのイニシアチブ「Verified(ベリファイド/検証済み)」に参加しています。
関連情報はこちら(IOM本部ウェブサイト 英文)
- IOMによる情報公開
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COVID-19へのIOMの対応 IOM本部特設サイト(英文)
全ての関連ニュースや情報、IOMがまとめるデータの窓口です。
COVID-19の概要や対処方法について、多言語での短い説明文書も用意されています
世界の移動制限の概要
Mobility Impacts COVID-19 (英文) Travel Restrictions
感染拡大の影響で移動制限が行われている地域や箇所を、地図上で確認することができます。
コロナ危機における移住労働者保護のための雇用主と人材紹介業者へのガイダンス
COVID-19 Guidance for Employers and Labour Recruiters
(その他のリンク IOM本部サイトKey Resourcesより)
COVID-19 Emerging Immigration, Consular and Visa Needs & Recommendations
Migration data relevant for the COVID-19 pandemic
Migration Health Evidence Portal for COVID19
IOM Statement on COVID-19 and Mobility
IOM’s Global Crisis Response Platform 新型コロナウイルス感染症対応を含む世界各地の危機や非自発的移住に対する、IOMの活動計画と必要とされる資金額の最新情報を紹介
Global Forum on Migration and Development (GFMD) Mayors Mechanism and activities on COVID-19