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明日を見据え、今日行動する 「気候変動による人の移動」への解決策

IOMは、ギニア共和国全土の地域社会と連携し、気候変動の影響を緩和し、またそれに適応する方法を模索している 写真:IOM 2022/M. Mohammed

【ジュネーブ】今日、気候変動による移住は現実味を帯びている。熱波、山火事、干ばつ、洪水などのあらゆる自然災害は何千万人もの生活に影を落としている。増大する気候変動の影響は、パンデミックから紛争、景気後退や食料不安に至るまで、他の世界的危機とも重なり合い、世界はかつてないほど切迫した状況に置かれている。

国際移住機関(IOM)は、10月5、6日にジュネーブで開催された「移住に関する国際対話」(IDM2023)において、重要な政策文書である「明日を見据え、今日行動する 『気候変動による人の移動』の未来」を発表した。これは、人命を救い、人権を守り、また、移住の力を活用することで開発やグリーントランジション(環境配慮や持続可能性のある社会への移行)を後押しするための一連の行動計画を示している。

エイミー・ポープIOM事務局長はこう述べた。

「私たちは今こそ、気候変動の影響を受ける個人や世帯、地域社会、とりわけ最も弱い立場にある人々が持ち得る選択肢を広げるために、一丸となって行動を加速し、その規模を拡大するべきです。無駄にできる時間は全くありません。」

私たちがいつ、どこで気候に関連する危機に晒されるかという予測は、危なげな展望を示している。気候変動による直接的な影響は、農業生産性の低下などの二次的な影響でさらに悪化し、2050年までに最大で2億1,600万人もの居住国内での移住を引き起こすと推計されている。

また、2030年までに、世界人口の半数が洪水や暴風雨、津波のリスクがある沿岸地域に住むと予測される。2100年までに、全人類の50%から75%が、生命を脅かす気温と湿度に晒される可能性がある。今こそ、エビデンスから目をそらさず、数多くの関連する協定を活用して、「人の移動」を、気候変動の影響に対処し対策を練るための方程式の中核に据えるべきである。

この政策文書では、なぜ今気候変動の課題において人の移動が大切で、これからさらに重要性を増すのかを概説する他、将来への見通しやその他の利用可能なツールを提示することで、「気候変動による人の移動」にまつわる将来の危機に備えた行動を後押ししている。

本文書ではまた、気候変動の影響を特に受けやすく、最も弱い立場にある個人や地域社会を巻き込み、支援するための具体的な行動を提案している。私たちが進歩し、行動を促していくためには何ができるのか、IOMがこれまで、世界規模、地域規模、国や地方レベルで、政府や他の国連機関、パートナー組織と連携してきた経験を生かし、効果的な解決策として様々な実践例が盛り込まれている。

今年11月に開催される国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)を前に、気候変動に対処するための世界的な取り組みにおいて、人の移動の観点は重要視されるべきだ。

人の移動は、気候変動への適応に関する重要な要素であると認識され、損失と損害を補填するための新しい財源など、資金調達メカニズムにも組み込まれるべきである。先日のSDGサミットから、来月アラブ首長国連邦で開催されるCOP28、2024年に開催される「国連未来サミット」に至るまで、主要な国際的議論の場において、人の移動はすべての人にとってより良い明日を実現するための解決策の一部であるべきだ。

その実現のためには、人の移動や気候変動に加え、人道支援、開発、平和など各分野で活動する関係者が力を合わせる必要がある。この文書は、未来の大使であり、変革の担い手である若者が中心的役割を果たすことに注目している。加えて、民間部門や投資家を動員することも、最も必要とされる場所で未来志向で革新的な解決策を生み出していくための重要なテーマである。

 

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報告書本文(英語)は下記よりご覧いただけます。

Thinking about Tomorrow, Acting Today: The Future of Climate Mobility | IOM Publications Platform