政策概要「新型コロナウイルス感染症と移動する人々」発表 国連事務総長、COVID-19パンデミックにおける難民と移民の保護の必要性を強調
(2020年6月3日付 UN Newsをもとに構成)
アントニオ・グテーレス国連事務総長は6月3日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する最新の政策概要(”Policy Brief: COVID-19 and People on the Move”)を発表した。
これは各国政府に、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の数字によれば世界で7,000万人以上にのぼる「移動する人々」を保護する責任を再確認させる内容となっている。
「単独でパンデミックと闘い、人の移動に対処できる国はありません。しかし私たちは連携することで、ウイルスの拡散を抑制し、最も脆弱な人々への影響を緩和し、全ての人々のためにより良く復興することができます。」と、グテーレス事務総長は政策概要の発表に寄せたビデオメッセージで述べた。
ビデオメッセージの日本語訳はこちら(国連広報センターウェブサイト)
3つの危機が一度に
パンデミックは世界中で人々の生活や生計手段を破壊しているが、いちばん大きな影響を受けているのは最も脆弱な立場に置かれた人々だ。
こうした人々には、不安定な立場にある難民や国内避難民、移民が含まれるが、グテーレス事務総長は、彼らは3つの危機に一度に直面していると指摘する。 まずCOVID-19は健康の危機で、移動する人々は、多くの場合医療や水、衛生設備へのアクセスが困難で、物理的距離は「叶わぬ贅沢」という混雑した状況で、ウイルスにさらされる可能性がある。
移動する人々、特にインフォーマル・セクターで働いていて保護へのアクセスがない人々はさらに、社会経済的危機にも直面している。
「加えて、COVID-19による所得の減少によって、1,090億ドルというとてつもない規模で減少する可能性が高くなっています。つまり、政府開発援助(ODA)総額のおよそ4分の3に匹敵する金額が、本国で送金に頼って生活する8億人の手に届かなくなるのです。」ともグテーレス事務総長は述べた。
後の危機は、150カ国以上がウイルスの蔓延を防ぐために国境制限を課している状況下の保護にまつわるもので、多くの場合、迫害からの庇護を申請する者について、例外を設けていない。
「同時に、COVID-19に対する不安は、外国人嫌い(排外主義)、人種主義、スティグマ(偏見や差別)も一気に増加させました。そして、もともと不安定な立場に置かれている女性や少女は、ますますジェンダーに基づく暴力や虐待、搾取にさらされる危険が高まっていて、より悲惨な状況に直面しています。」と事務総長は付け加えた。
社会的包摂・尊厳・安全
国連事務総長の立場から言えば、パンデミックは「人の移動を改めて認識する」機会をもたらしている。
しかし、これは以下の4つの重要な理解を考慮に入れることを意味している。
(1) 排除のコストは高くつくことを認識する
「包摂的な公衆衛生と社会経済的対応は、ウイルスを抑え込み、経済を再生し、持続可能な開発目標(SDGs)の推進に役立ちます。」とグテーレス事務総長は説明した。
(2) 危機にあって人々の尊厳を維持する
事務総長は尊厳の重視に加えて、難民保護の国際原則を尊重しながら渡航制限や国境管理を行っている国の経験から学ぶことを勧めている。
(3) 全ての人が安全でなければ、誰一人安全ではない
COVID-19の診断や治療のための医薬品は全ての人にとってアクセス可能でなければならないと、事務総長は繰り返し述べている。
(4) 「移動する人々」を解決策に含むことの重要性
事務総長は加えて、各国政府に移住の正規化と送金手数料の削減への道筋を模索することを求めた。 「世界の難民保護の責任が公平に分担され、人の移動が引き続き安全で包摂的、かつ国際的な人権・難民法を尊重したものであることは、私たちみんなの共通の利益です。」とグテーレス事務総長は述べた。
原文(英語)はこちら
政策概要「新型コロナウイルス感染症と移動する人々」(英文PDF)はこちらで全文をご覧いただけます。
Policy Brief: COVID-19 and People on the Move
国連事務総長がCOVID-19パンデミックにおける難民と移民の保護の必要性を強調し、政策概要を発表するに当たり、アントニオ・ヴィトリーノIOM事務局長は以下のメッセージを発表しました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのIOMの対応について詳しくはこちら