2019年12月18日 国際移住者デー
国際移住機関(IOM)事務局長
アントニオ・ヴィトリーノ
我々が移民について語るとき、非常に多くの場合、危機的な状況における極限の苦難について話さなければならない。リビアで収容されている移民は、困難な状況にある自国や紛争、災害を逃れて新しい生活を求め、トラックの荷台に乗せられて人身取引の被害に遭った。
本日、国際移住者デーにあたり、こうした移民一人ひとりに思いを寄せ、全ての人々の権利を尊重する必要性を強調する。国連は、我々の社会全体の構成員である、推計2億7,200万人の移民が認められるよう、この日を制定した。
しかし、この日は、名前以外ほとんど何も持たずにやってくる移民を新しく受け入れる、コミュニティの寛容さや温かさについて思いを寄せる機会でもある。コロンビアでも、ドイツでも、世界中で、家や生活を自分たちより少し恵まれない人々と共有する多くのコミュニティの例がみられる。受入コミュニティは移民を受け入れる前から困難な状況にある場合が多く、資源も限られていて、発展のために苦労をしている。
今年の国際移住者デーに、IOMは移民自身とともに、移民が活躍することを可能にして、実際に活躍もしているコミュニティに対する評価として、社会的結束に注目することにした。我々の社会は静的なものでなく、コミュニティのつながりは、不景気や人口の高齢化、政治の世界の様々な緊張などの変化に直面するたびに変動し、再構築されている。
我々が移住について語るときには、それがいいか悪いか、移住には費用がかかり過ぎるか、あるいは移住に対する支出が少なすぎるか、そして、移民の我々の生活への明確な貢献はどれくらいか、などを議論しがちである。移住は進化していて、しばしば努力を要する課題だが、すでに我々の社会の一部であり、さまざまな目に見えない形で社会を豊かにしている。
我々は、移民はすでにいつの間にか我々の生活の一部になっていて、彼らの貢献は我々の毎日のやり取りの中に織り込まれているということを忘れがちだ。移民の中には、新しい技術を得ようと学ぶ学者もいる。よりよい賃金やより多様な機会を求めて、専門技術を磨こうとする移民もいる。家族に合流して、家族の世話をしながら人生の新しい門出を迎える移民もいる。
多くの移民が近くの国境を越えて、自国とそれ程違わない国でチャンスを探す。実際、ある国に住みながら別の国で働くといった形で、労働者が繰り返し国境を越えるのを目にすることが増えている。移民の中には大陸や海を越え、多大なリスクを背負って大きな一歩を踏み出し、言語、宗教上のしきたり、食べ物、文化的規範の異なる新しい世界に飛び込む者もいる。彼らは移住先の我々の中で成功するために、大きな危険を冒している。
移民は、新しい社会的・文化的な環境に適応していくための努力をしたり、例えばジェンダー間の平等といったその社会の価値観を尊重したりするために、変わらなければならない。相互に多様な信念を尊重することが、全ての人の利益となる社会的結束への基礎となる。
繁栄するコミュニティは、変化を受け入れ、それに適合している。移民はそうした変化の歓迎すべき一部である。移民はまた、困難な時、コミュニティが環境変化や災害、失業、政治的混乱など予測できない打撃を受けたときに、優れた強靭性を発揮する可能性がある。
しかし、コミュニティだけでは適合できない。公共サービスやオリエンテーション、言語のサポート、人材育成への投資、広くコミュニティ・インフラの強化などの適切な提供を確実にするためには、コミュニティは政府や、IOMなどの機関の支援を必要としている。
今日の政治状況には課題が多く、移民はしばしば、解決への要素の一つというよりは、社会のあらゆる害についてのスケープゴートに仕立てられてしまいがちである。だからこそ、本日、我々は、国際社会が現実を直視するよう、何度も要請する。歴史的にも、現代においても、移住が適切に管理されれば、閉鎖的な社会はオープンになり、政治的な緊張は解消する。
生活するにしても、働くにしても、誰かを愛するにしても、あるいは、何かを作り上げるにしても、私たちは一緒に行うのである。
#WeTogether #MigrantsDay
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