ニュース
Local

南西アジア 感染症対策を強化して国境管理能力を向上 日本政府の支援

国際移住機関(IOM)は2022年10月17日、スリランカ政府およびモルディブ政府の関係省庁と連携し、「南西アジアにおける感染症に対応するための国境管理能力向上計画」の名称のもと、地域事業を立ち上げた。

日本政府から11.7億円の無償資金協力を得て、この地域事業は、人の往来を再活性化するのに妨げとなっている感染症に対応するため、スリランカとモルディブの国境管理能力の向上を図る。

新型コロナウイルス感染症の最も大きな影響の一つは、人の移動の大幅な減少だ。海外からの観光客や移住労働者、ビジネス出張がもたらす収入に大きく依存しているスリランカとモルディブにおいて、人の移動の減少は経済社会的に深刻な影響を及ぼした。国境の閉鎖や付随する規制の相次ぐ導入は、従来の貿易交流や人の移動を遮断してきた。また、国境管理の関係省庁や国境付近のコミュニティは高い感染リスクにさらされていた。

水越英明駐スリランカ日本大使は「スリランカは積極的に海外からの観光客を呼び込んでいて、将来的にも増加していくと見込まれます。感染症の流行抑制に向けて国境管理能力を強化し、職員や旅行者に安全を保障することは非常に重要な取り組みです。現在の経済危機からの回復にも大きく寄与し、観光業を主要産業の一つとするスリランカのさらなる経済成長につながるでしょう。」と述べた。

スリランカへの支援は、安全面での改善をもたらし、国境管理施設における業務の効率化を支援すると同時に、感染症の流行による公衆衛生上のリスクに対するより効果的な備えと積極的な対応を可能とする。

スリランカ政府保健省の保健サービス局長を務めるアセラ・グナワルデナ博士は、「この事業は国境管理施設において、インフラや業務に当たっている職員の機動性を強化するものです。我が国の公衆衛生面での対応能力を高めると同時に、国際的な基準に即したサービスを提供することができるようになります。これは国際保健規則(IHR2005)のさらなる履行を促すでしょう。」と話した。

この事業は、カトゥナーヤカのバンダラナイケ国際空港やコロンボ港において、国際保健規則に基づいた介入を支援する。国境管理施設で働く職員約700人を訓練し、インフラを改善する。

スリランカ空港・航空サービス会長のG.A.チャンドラシリ少将は、「現在も続く感染症の流行とその航空部門への影響を考えると、この事業は非常に時機にかなっていて、重要です。」と強調した。「すべての国境管理関係省庁との連携を重視した総合的なアプローチと介入の持続可能性は、国境における国際保健規則の基準に沿っており、国境における安全を強化すると同時に、入国審査における渡航者への便宜を高めます。」と話した。

この事業は、海外からの渡航を受け入れる国境管理施設の安全な運営を可能にすることで、渡航者の不安を払拭し、国境を越える人の移動を早期にパンデミック前と同水準にまで回復させるために計画された。新しい技術やインフラ、入国管理手順の導入、職員等への訓練や施設の改修を行って、国境管理施設における渡航者への手続きと保健スクリーニングの円滑な両立を可能とする。渡航者情報の管理を効率化し、待機時間を短縮、国境管理職員による非接触型の手続きを促す。また、感染予防や緊急ケースへの対応策を整え、国境管理施設で発生する危険のあり得る医療系廃棄物の安全な廃棄方法を確立する。結果として、職員や乗員、渡航者に対して安全な環境を提供することができると同時に、環境面および健康面でのリスクを減少させる。渡航者と国境管理施設で働く職員がこの事業の主な受益者であるが、広く空港職員や港湾職員も同様の恩恵を受ける。

サラ・ダッシュIOMスリランカ・モルディブ代表は、以下のように説明した。
「新型コロナウイルス感染症の流行から得た経験を生かして、IOMの『移住と持続可能な開発に関する戦略』に沿って、スリランカとモルディブが将来的な感染症や健康危機に対応できるように支援します。IOMは受け入れ国の政府関係者と緊密に連携して、移住がもたらす開発面への恩恵を活用しながら、移民を含む海外からの渡航者に煩わしさがなく、尊厳を守られる手続きを提供していきます。」

写真:IOMジュネーブ本部での、本清 在ジュネーブ国際機関日本政府代表部大使兼臨時代理大使とヴィトリーノIOM事務局長による資金供与に関する署名式の様子