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安全で秩序ある正規の移住のためのグローバルコンパクトの施行から2年 約束を行動に

(2020年12月1日付 国連移住ネットワークリリース)

国連事務総長は12月1日、加盟国に対し、安全で秩序ある正規の移住のためのグローバルコンパクト(GCM)を実施する努力をより一層強め、新型コロナウイルス感染症への対応の最中にあっても、法的ステータスに係わらず全ての移民の人権を擁護するよう要請した。

事務総長による報告書「約束を行動に - 安全で秩序ある正規移住のためのグローバルコンパクト」では、移住ガバナンスとあらゆるレベルでの協力体制の向上に必要とされる努力について言及しながら、施行から2年間にGCMという協力フレームワークが及ぼした影響を強調している。

新型コロナウイルス感染症が、様々な分野でGCM実施の障壁となった一方で、支えとなるような政策の採用も促した。保健医療やその他の基本的サービスを、在留資格に関わらず全ての人へ提供することや、就労や居住許可の期限の延長、移民の在留資格の合法化、収容所からの子どもや家族を含めた移民の解放、収容所ではなくコミュニティでの非懲罰的な選択肢を優先することなど、有望な施策がみられた。

国連事務総長はビデオメッセージで、「移民はスティグマ(汚名)の対象となったり、医療や他の公的サービスの利用を拒否されたりされるべきではありません。ウイルスとヘイト(憎悪)に対して私たちの社会の免疫をさらに強める必要があります」と述べた。

国連移住ネットワークは、強制送還について、移民とそのコミュニティの人権、健康、安全を守るよう強く提言してきたが、いくつかの国は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて強制送還を中止した。自国に戻る移民が健康診断を受け、適切な受け入れをされ、自主隔離のための宿泊施設を提供され、子どもの保護やその他のサービス、再統合支援が行われるよう取り組みをした国もある。

しかし、パンデミックへの対応は既存の不平等をさらに悪化させ、時に彼ら自身の命に関わるほど、公衆衛生の口実のもと、移民たちのウェルビーイングや尊厳を侵害してきた。数百万人もの移民が国境の閉鎖や国際的な移動制限に影響を受けている。また、多くの移民が自国に安全に戻る手段がなく足止めされている。健康や安全、子どもの保護への配慮がないものを含む強制送還はこのパンデミックの間で増加し、多くの子どもを含む移民の生命を危険にさらしている。

低中所得国において、新型コロナウイルス感染症の影響で送金が途絶えることは、数多くの移民とその家族の生命とウェルビーイングに壊滅的な影響を及ぼし、持続可能な開発目標の達成への歩みに逆行するものとなっている。一方でパンデミックによって、国際移民が医療や食料供給などの分野での、エッセンシャルワーカーとしての重要な役割を果たしていることを明らかにした。

新型コロナウイルス感染症への対応は、在留資格に関わらず、脆弱な状況に置かれている人々を含む全ての人々に平等に留意することで効果的になる。それ以外のあらゆるアプローチは、公衆衛生全体の失敗と人権や労働権の侵害を生みだすだろう。

事務総長の報告書で明確に示されているように、GCMは全ての人々の利益が最善の形で統治される枠組みを提供している。「私たちが連帯していれば、全ての人にとってうまくいく移住を実現できる。」と事務総長は言う。

多くの加盟国がこの動きを先導している。全ての地域の国々がGCMの擁護者となることに同意し、各国での経験を共有し、GCMが移住の利点を最適化するために有効だと証明することを約束している。

現場では、多くの非政府アクターが移民の社会統合や労働市場統合支援に直接関わっており、新型コロナウイルス感染症パンデミックの第一線で移民コミュニティとともに、彼らのために連日活動している。重要な支援を提供することで、これらの組織は必要不可欠なセーフティネットとしての役割を果たしている。政府や関係者による、新型コロナウイルス感染症に対する協調された政策対応の策定は、移民の権利が擁護され移民の貢献が認識されるための重要な鍵となっている。

今後数カ月は、これまでの成果をさらに積み上げていくために重要となる。地域レベルでは、加盟国と全てのパートナーは、GCMの全体的な理念を達成するために何が行われていて、これから更に何が行われるべきかを継続的に評価する。こうした地域レベルの対話は、2022年に行われるGCMのグローバルな評価の土台となる。

国連移住ネットワークは、GCMの実施をさらに進めるために、国際協力と国際協同の理念を受け入れるように呼び掛ける、事務総長の提言を再度強調する。国連移住ネットワークは、加盟国が人権と、移民や目的地・出身地・経由地のコミュニティのウェルビーイングを最優先することをいつでも支援する。

新型コロナウイルス感染症パンデミックの現段階が終わりに近づく可能性があることから、来年はGCMが世界中の何百万人もの移民とそのコミュニティの生活に、前向きな変革と明確な結果をもたらすことができると示す、極めて重要な年になるといえる。 

リリース原文(英文)はこちら