日本が直面する人の移動の問題への対応
日本におけるIOMの活動は1980年代のインドシナ難民受け入れ支援に始まり、近年では、日本を取り巻く人の移動の変化に対応した多様な取り組みへと拡大しています。
難民の第三国定住
第三国定住とは、難民が一時的な庇護国から、恒久的な定住が可能な第三国へ移動し、社会統合することです。IOMは世界各地で難民の第三国定住を支援しています。
日本も2010年からタイやマレーシアに滞在する難民の第三国定住を受け入れています。IOMは日本政府からの要請で、難民の出国準備、および日本までの移送等の支援をしています。具体的には、健康診断や生活ガイダンス・初級語学研修、滞在国政府からの出国許可の取り付け、航空券の手配、空港までの移送、搭乗の補助等を行う他、日本政府に対する情報の提供や受け入れる難民を決めるための政府面接ミッションの支援などをしています
日本ではまた、2000年代初頭から東南アジアからアメリカやカナダなどに移住する多数の難民の成田空港での乗り継ぎを日々アシストしています。
現代の奴隷制の撤廃
人身取引(トラフィッキング)対策
人身取引対策は、移民の性的搾取や強制労働など深刻な人権侵害に立ち向かう活動です。人身取引とは、何らかの強制的な手段で、搾取の目的で弱い立場にある人々を別の国や場所に移動させることを言います。一般的に、被害者の出身国は貧しく、目的国は比較的裕福な場合がほとんどです。IOMは主に、出身国における防止と目的国での被害者の保護を中心とする包括的な取り組みを実施しています。
アジアの経済大国である日本は、主要な人身取引被害者の受け入れ国の一つと見られています。IOMは日本国内で保護された被害者に対して、出身国への自主的で安全な帰国と、職業訓練や起業など出身国での社会復帰支援を、日本政府の「人身取引対策行動計画」の一環で2005年5月から実施しています。
ビジネスと人権
IOMは、企業が自社やサプライチェーンで雇用している移住労働者の人権と尊厳の保護を促進する活動を支援します。国内だけでなく、海外で事業を行う日本企業とも連携し、調査・研修、ガイドラインやツールの作成などを通じた支援を行っています。
自主的帰国及び社会復帰支援
帰国の意思を持ちながらも経済的な理由などでその願いを果たせずにいる人たちに対して、人道的な帰国方法を提供します。帰国支援の迅速な実施は、効果的な難民審査や出入国管理と相まって、合法的移住制度の維持と非正規移住対策に大きく貢献します。
IOMは帰国希望者が健康に人権や尊厳を保ち帰国できるよう、カウンセリング、健康診断、渡航書類の準備、移送手段の手配を行うほか、持続的に社会復帰できるよう帰還直後の到着地での出迎えから、国内での交通手配、経済的な自立に向けた再定住までを支援しています。
日本では2013年より法務省出入国在留管理庁からの要請で、帰国の意思はあってもさまざまな理由で帰国ができずにいる人たちに、帰国手続きや帰国後の生計手段の回復支援等を行っています。
「新日系フィリピン人(JFC)」に係わる分野横断型ネットワーク構築事業(2008年-2011年)
IOMは、トヨタ財団の資金協力による事業、「新日系フィリピン人(JFC)を支援する政府機関、国際機関、民間団体、企業間のネットワーク構築 - 新日系フィリピン人の日本への帰還・定住スキームの制度化を目指して - 」を、2008年から2011年まで実施しました。この事業は、JFCの人権と福祉を促進し、持続可能な帰還・移住スキームを構築し、同時に、JFCが抱える問題に全力で取り組む日比両国政府、市民団体、企業等の主要参加機関間の強固なネットワークを構築することも目指しました。