ジュネーブ本部 官民での勤務とIOMエジプト事務所での経験を経て、JPOとして本部で勤務 2023年9月
IOMジュネーブ本部 ポリシー・オフィサー
田澤 優花(たざわ ゆうか)
■プロフィール
日本国内の大学及び大学院に在学中に、米国及びタイに1年間ずつ留学。大手メーカーで勤務後、在ジュネーブ日本政府代表部で専門調査員、IOMエジプト事務所でUNV、世界銀行のコンサルタントとしての勤務を経て、2021年度JPO試験に合格。2023年1月より現職で、現在JPO1年目。
Q:なぜIOMで働きたいと思ったのですか。
A:私の祖父はタイ出身で、青年期に日本へ移住してきたため、私も自然と多文化共生や移住・移民といったテーマに関心を持つようになりました。
そのため、かなり前からIOMの活動についてイメージがありましたが、本格的なターニングポイントとなったのは国際人権法を学んだ大学院時代、タイに留学したことです。自分のルーツでもある国で生活する中で、移民・難民に関する研究の一環でフィールドワークを行い、国連職員として社会に貢献するという志がより明確になりました。
Q:IOMでのやりがいを教えてください。
A: 移住・移民というテーマは実に受益者が多く、また守備範囲が政策からオペレーションまで幅広いことがやりがいです。また、IOMは国連システムに加わってまだ日が浅いせいか、部署間の障壁が低かったり、ルールに縛られすぎなかったり、組織としての柔軟性も高く働きやすいと感じます。
Q:これまでのキャリアについて教えてください。
A:タイに留学していたことから、私のキャリアは、日本企業の現地採用としてバンコクでスタートしました。しかし入社から半年ほどで東京本社に逆出向する形となり、幸運なことに国際渉外として公的機関との連携にも携わりました。その後、専門調査員としてジュネーブ国際機関日本政府代表部に赴き、国連人権理事会を主に担当しました。国際公共の仕事に関わる中でフィールド経験の必要性を強く感じ、広島平和構築人材育成センター(HPC)が実施する「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」のプライマリーコースに参加してIOMエジプト事務所で国連ボランティア(UNV)のポストを得て、国際機関でのキャリアを踏み出しました。
Q:IOMエジプト事務所での仕事はいかがでしたか。
A:地中海に面したエジプトは、スーダンなどアフリカから来た移民たちの目的国であり、また、ヨーロッパ大陸を目指す経由国でもあります。私が赴任した2021年はちょうどコロナ禍で、移動を中断せざるを得ない移民たちが、雇用もなく、途中で資金が底を突くなどの困難を抱えるケースが多くありました。
アラビア語のハードルが高く、フィールドで被益者と関わる機会が限られたのがもどかしかったですが、物資支給や医療支援など、実際のフロントラインで事業に携わる醍醐味を感じられました。
また、私にとってエジプトは、これまでいったことがない地域で見分を深めたいという目的もあり、次の目標であったJPO(Junior Professional Officer)試験へ向けて大きなステップとなりました。
Q:現在の仕事について教えてください。
A:「ポリシー・オフィサー」というポストで、主に政策に関する業務における内部調整や、IOM内のタスクフォースの運営などを担っています。私自身は、移民政策全般に関する横串的な調整機能の役割を果たす政策・調査研究局 政策調整ユニット(Department of Policy and Research, Policy Coordination Unit)という部署にいます。
例えば、IOMが用いる「移住ガバナンス指標(Migration Governance Indicators)」に則り世界各国の移民政策についてアセスメントを行う取組みでは、より包括的なフレームワークを念頭に置いた本部の視点に立ちつつ、フィールドオフィスで勤務した自分の経験も活かし、各国オフィスと連携しながらプロジェクトを進めています。
Q:今後の展望について教えてください。
A:これまでフィールドオフィス、そして本部勤務とキャリアを歩んできましたが、次なる目標は家庭との両立と、キャリアの一貫性を出していくことの二本柱です。
JPOの2年目となる来年には子どもが生まれる予定で、現在ロンドンにいる夫を呼び寄せて家族との生活がはじまります。幸いジュネーブには外国人が多いため英語であらゆるサービスを受けることが出来、また周囲も復職後も働きやすいようによく配慮してくれています。
今後はよりキャリアの一貫性・専門性を高めていくため、もう少しフィールドオフィスに近いところで仕事をしたいとも考えています。特にIOMのアジア太平洋地域事務所はタイにあるので、私自身のバックグラウンドも活かせると考えています。
Q:国際機関を志す人に、メッセージをお願いします。
A:IOMはJPOの定着率が高いといわれますが、例えば人事部門が世界各国のJPOを一堂に集めてブリーフィングや研修を行うなど、実際に若手職員のキャリアをよく応援してくれる機関だと感じます。
また、私にとっては大学院時代のタイでの生活がターニングポイントだったので、国際協力を目指すのなら、自分の足で現地に赴き原体験を作ることは重要だと感じます。
JPO試験を受け、実際に赴任するにあたっては、先輩国連職員の話をとにかくたくさん聞きました。夢を描きながらも、理想と現実の双方を冷静に見極め、生活基盤も含めてよくイメージを膨らませていくことが大切だと思います。
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