ミクロネシア　祖母と孫 三世代で伝統スカートのオンラインビジネスに成功

2023年3月

成功への決意を胸に、ジュリーンさんは「JEMSソーイング・カンパニー」を開業しました。繊細な花柄の機械織や、大きなトロピカル・フラワーやミクロネシア特有のタトゥーのデザインをあしらった伝統的なスカートを、ポンペイ島からFacebookを通じて販売しています。

 会社のFacebookグループには9,000名近くの購読者がおり、さらにジュリーンさんの個人ページのネットワークも活用し、売上は右肩上がりです。

会社の顔はジュリーンさんかもしれませんが、この盛況ぶりの立役者は、エリナさんというポンペイ島はキティ村出身の61歳の女性です。社名の「JEMS」のEはエリナさんの頭文字で、本来は"Joseph and Erina Manuel Sewing Company "というエリナさん夫妻の家業を意味しています。

ポンペイ島の主要都市であるコロニアから6.5キロほど離れたキティ村の森の丘の上にあるエリナさんの家のベランダからは、いつ訪れてもミシンの音が聞こえてきます。彼女はそこで、2人の孫と、事業が拡大したときに採用した2人の女性とともに、針仕事をしています。

エリナさんは「ポンペイのスカートは最近とても人気です。」と言います。

ポンペイ島では、老若男女問わずスカートを履きます。路面店では、店の外の物干し竿にスカートを掛けて、55ドルから65ドル、あるいは刺繍の量によってそれ以上の値段で売るのが一般的です。

2021年1月、エリナさんはIOMから5,000ドルの資金提供を受けJEMSを興し、それからは決して時間を無駄にしませんでした。

彼女は、61歳にして初めて経営者となった経験をこう語ります。

グループを通じた女性の活躍を支援するIOMのプロジェクトにより、エリナさんとポンペイ島のコミュニティから12人の女性が選ばれ、金融リテラシーや簿記、キャッシュフロー予測、価格設定といった必要不可欠なスキルの研修を受けるとともに、希望する事業をはじめるための少額の資金提供を受けました。

JEMSを開業するまで、エリナさん夫妻の家計は、夫であるジョセフさんの社会保障に頼りきりで、時折、子どもたちに助けを求めることもありました。それまで、エリナさんは、自宅近くの渓谷に面した木々の生い茂る広大な土地で、バナナやタロイモなどの農作物を栽培して暮らしていました。

エリナさんは説明します。

「材料や糸、布地、はさみ、そしてミシンを全部で5台買いました。全てを1週間で揃えて、すぐに縫製に取り掛かりました。」

現在、彼女たちは毎週50着、あるいは、注文数によってはもっと多くのスカートを制作し、1着あたり10から100ドルで各地へオンラインで販売しています。

JEMSの成功の鍵は、ジュリーンさんのFacebookページにあります。地元のポンペイ島から、ミクロネシア連邦の他州、そしてグアムやアメリカ本土に至るまで、幅広い顧客とエリナさんを繋いでいるのです。

そのページを訪れた人は、商品に関心を持つと、ジュリーンさんに直接メッセージを送ります。そしてジュリーンさんは、顧客にとって最適な支払方法を手配します。支払方法には、銀行振込やウェスタンユニオンといったオンラインでの送金から、モバイル決済サービスの他、最近ではビットコインや株式での取引も加わりました。

最新の政府データによると、ミクロネシア連邦の15歳以上の女児や女性は、男性と比較して3倍も失業する傾向にあります。また女性の労働参加率も、男性と比べ22%低いことがわかっています。

新しいビジネスのおかげでエリナさんは世帯収入を多様化することができ、医療費や電気代など、これまでなら家族で賄うのに苦労していた出費をまかなえるようになりました。

ジュリーンさんが、オンライン上での支払に対応できるようになったことで、エリナさんはこれまでになかった異なる新たな市場に参入できるようになりました。伝統スカートの需要は、現在の生産能力をはるかに超えていますが、それは彼女の仕事へのモチベーションを高めています。

ジュリーンさんも、自身のマーケティングや販売、そして財務のスキルに磨きをかけ、プリントＴシャツやジュエリー、そして新鮮な魚にまで商品ラインナップを拡大させ、その全てをFacebookページで販売しています。

今、エリナさんは追加的な収入で生活費をまかなうだけでなく、隣人や友人、親戚をも支援しています。

エリナさんの夢は、いつの日かお店を開くことです。