「幸せな気持ちです」 12歳のテディくんは、IOM精神保健・心理社会的サポート (MHPSS) カウンセラーに、今どのような気持ちか尋ねられそう綴った。その前日には彼は、「怖い気持ちです」と書いていた。

ティグライ州シレにあるIOM精神保健・心理社会的サポートセンターで過ごす、避難民のテディくん Photo: IOM/Kaye Viray

テディくんは、エチオピア北部で現在も続く武力衝突の結果、避難を余儀なくされた199万人の人々のうちの1人。ティグライ州シレにある、数千人もの国内避難民が暮らすキャンプで生活している。

「家族や他の人たちと一緒に、家から逃げてきました。あっという間のことでした。その日のことを忘れることはありません。」と彼は話す。 キャンプに暮らす他の多くの子どもたちと同様に、テディくんも武力衝突により苦しめられている。 ある親はこう話す。「突然大きな音がすると、子どもたちが反応します。ある時、トラックが重い岩を下ろした時に銃声のような音がしました。近くで遊んでいた子どもたちはすぐにテーブルの下に隠れ、耳を塞いで泣いていました。」

武力衝突によって避難民となった子どもたちは、ティグライ州シレのIOM精神保健・心理社会的サポートセンターで回復のためのプロセスを始める Photo: IOM/Kaye Viray

テディくんは、IOMの精神保健専門家が行う、10歳から16歳までの子どもの国内避難民向けの週1回のグループカウンセリングに参加している。子どもたちは緊張状態をほどき、過去の経験から立ち直り始めることができる。

テディくんのような多くの子どもたちは、ゲームやおもちゃ、画材などがあり、子どもに適した環境のIOM精神保健・心理社会的サポートセンターで過ごす時間を楽しんでいる。人が密集する避難所という困難な状況下でも、IOM職員は子どもたち全員が安心して、話を聞いてもらえていると感じ、安全に過ごすことができるよう全力を尽くしている。

IOM精神保健・心理社会的サポートセンターには、ゲームやおもちゃ、画材などがあり、子どもに適した環境が整っている Photo: IOM/Kaye Viray
IOM精神保健・心理的社会サポートセンターにあるゲームやおもちゃ、画材などで子どもたちは楽しく過ごすことができる Photo: IOM/Kaye Viray

IOM精神保健・心理社会的サポートによるエチオピア北部での対応

IOM精神保健・心理社会的サポートの支援活動は、コミュニティを基盤とした柔軟なアプローチにより、危機の影響を受けた人々や移民、避難民、帰還民や受け入れコミュニティに届いている。武力衝突に影響を受けた人々の身体的健康と精神的ウェルビーイングを向上させるために、IOMはティグライ州シレの避難所の一つに精神保健・心理社会的サポートセンターを設置した。文化・レクリエーション活動に参加することで、人々はお互いに交流し、経験を共有し、対処技術を学び、社会的つながりを作ることができる。加えて、心理的に苦痛を感じている人々は、センターで、IOM精神保健・心理社会的サポートカウンセラーの個別カウンセリングを受ける。IOMの診療所とともに、IOM精神保健・心理社会的サポートセンターには、毎週何百人もの国内避難民や受け入れコミュニティの人が訪れる。

IOMはティグライ州シレの国内避難民の避難所の一つに精神保健・心理社会的サポートクリニックを設立 Photo: IOM/Kaye Viray

シレにおけるIOM精神保健・心理社会的サポートは、2021年の3月に開始された。心理教育、個別および家族カウンセリング、心理的応急処置、保護者のいない子どもへの支援、家族の追跡、精神保健に関する医療機関紹介サービスを提供してきた。

IOM精神保健・心理社会的サポートカウンセラーがティグライ州シレで国内避難民に対し1対1のカウンセリングを行う Photo: IOM/Kaye Viray

「潜在能力を認識し、生活を向上させる社会的環境を作るためには、IOM精神保健・心理社会的サポートがそれぞれの個人や家族、コミュニティのニーズに応える必要があると、IOMは考えています。」アメル・サハルIOM精神保健・心理社会的サポートプログラム担当官は話す。

「このアプローチは、人間開発と精神保健、心理社会的ウェルビーイングが社会関係と密接に関連しており、緊急事態の際にはしばしば断絶してしまうという事実に基づいています。ですから、心理社会的サポートを直接提供し、個人およびコミュニティの精神保健を向上させる地域の能力を構築する介入は、緊急事態の最中およびその後にも必要不可欠なものです。現在に至るまで、IOMは精神保健・心理社会的サポートサービスをエチオピア北部の15,500人以上の人々に提供してきました。」とも話す。

常設の診療所の他に、IOMによる保健支援は移動保健・栄養支援チームと精神保健・心理社会的サポートチームによって行われており、エチオピア北部を移動しながら支援を提供している。職員は診察や、性と生殖に関する基礎的な保健サービスの提供、重度の栄養失調の子どものスクリーニングおよび医療機関への紹介、新型コロナウイルス感染症の危険を知らせる活動やコミュニティレベルでの対応を行っている。

IOMはエチオピア北部の国内避難民に対し多様な保健支援を行なっている Photo: IOM/Kaye Viray

IOMはこれまで、17,000人以上が診察を受け、4,600人以上の子どもが栄養失調のスクリーニングを受け、その中で241人の栄養失調が判明し医療機関へ紹介された。また、76,000人以上に対して施設やコミュニティにおける保健推進活動を提供し、1,300人以上の女性に対して生殖に関する保健サービスを提供した。

主要な保健支援を届けると同時に、IOMはティグライ州地域保健省が行う政府保健従事者のトレーニングを支援している。IOMはシレにおいて、IOMは30人の保健担当職員に対するコレラ対応訓練や、保健担当職員34人に対する精神保健対応プログラム・人道的介入ガイド(mhGAP-HIG)の訓練を支援した。感染拡大への備えと対応のため、シレやメケレの国内避難民キャンプにおける経口コレラワクチン支援や、シレの国内避難民に対する新型コロナウイルス感染症ワクチン支援も行っている。

テディくんは遊んでいる間に、彼の夢や希望について尋ねられた。 「将来は、IOMで働きたいです。このセンターは、僕や友だちのみんなをたくさん助けてくれました。大人になったら、同じことができたらいいなと思います。いつかは、IOMの代表にだってなれるかも。学校がまた始まったら、たくさん勉強して目標を達成できるようにがんばります。」彼は熱心な様子でそう話した。

Photo: IOM/Kaye Viray

エチオピア北部におけるIOMの保健支援は、日本国政府の援助によって実施されている。