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ウクライナ南部 ダム決壊による避難民への支援を急ぐ

【ジュネーブ/キーウ】国際移住機関(IOM)は、ウクライナ南部へルソン州のカホフカダムの破壊により影響を受けた人々への緊急支援を実施している。

周辺の基幹インフラが大きく損傷し、さらなる被害拡大が迫る中、IOMは、避難者を受け入れている地域に清潔な水を供給した他、ウクライナ政府との協力のもと、今後数週間に亘り必要となる追加支援について調査している。

アントニオ・ヴィトリーノIOM事務局長は、「この破壊行為により、何千人もの命が危険に晒されています。これまで1年以上に亘る戦争の影響による人道危機に対処してきたウクライナにとって、さらに切実な損害となりました。」と述べた。

66日の夜間には、ドニプロ川に位置する大型ダムが大きく損傷し、大量の水が下流に押し寄せた。ダムの下流に位置するヘルソン市は、2022年末に生じた激しい戦闘から回復する間もなく一部が浸水した。被害を受けた地域住民は避難を促されており、ウクライナ政府関係機関は、16,000人以上の住民が川の西岸にあるウクライナ支配下の「危険地帯」に居住していると指摘する。

ヴィトリーノIOM事務局長はさらに、「公共インフラが標的になることは決してあってはなりません。しかし実際には、人道的な状況の悪化に伴い、罪のない一般市民が被害の大きい洪水地帯での生活を余儀なくされるだけでなく、今後数週間に亘り、清潔な水や必要不可欠なエネルギー供給の大幅な不足に直面することになります。」と述べた。

人命への脅威と環境破壊に加え、現場は原子力発電所およびロシアとの戦闘の最前線からも近く、さらなる安全上の懸念が広がっている。今後、クリミア自治共和国やその他の地域への給水に加え、ダムの貯水池から取水するザポリッジャ原子力発電所の冷却システムにも影響を及ぼす可能性もある。

IOMはウクライナ国内で活動する最大の人道支援組織で、飲料水と食料が優先的なニーズであるとの判断のもと、地方政府関係機関と連携しながら水・衛生支援の拡大、緊急物資の配布、避難所への支援、保健医療支援の提供を計画している。

水の供給への影響や洪水の恐れを踏まえると、今後の感染症の脅威は深刻だ。IOMは、コレラキットの配布などの感染予防と管理対策の準備を整えている。

ヴィトリーノIOM事務局長は「戦争による壊滅的な被害と数多の課題の中、私たちはウクライナの復旧・復興に取り組まなければなりません。緊急支援に取り組む一方で、ウクライナの平和な未来にも目を向けていかなければなりません。」と重ねて表明した。