人身取引被害者を受けたフィリピン人被害者の 出身国における社会復帰状況に関する追跡調査

2019年3月発行
 
IOM駐日事務所が日本政府による「人身取引対策行動計画」の枠組みの下、「人身取引被害者のための帰国・社会復帰支援プログラム(RRATVJ)」を開始してから約14年が経過しました。2005年のプログラム開始時より、IOMは日本政府からの拠出金を受け、希望する被害者に対する帰国、および個人のニーズに合わせた社会復帰支援を提供しています。調査時点での裨益者の合計は、307人でした(2005-2016年)。

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このほど、駐日事務所が実施する支援の効果を測定し、課題を明らかにすることを目的として、帰国した支援対象者の心理社会的、社会的、および経済的な観点から追跡調査を実施しました。本報告書は、調査によって明らかになったことを示すと同時に、調査結果に基づいた提言をまとめたものです。

本報告書の調査は2017年から2018年にかけて、RRATVJの裨益者の中で最も人数の多いフィリピン人裨益者に質問票を送って行われました。さらに、回答者の中から6人に、個別ケースを掘り下げるために面接調査を実施しました。面接調査で聴取した内容は、個人情報保護に配慮しながら、事例として紹介しています。
 
結果として、9割以上の人がRRATVJの支援が有益であったと回答しました。また社会復帰支援については、49%がRRATVJの支援が期待に応えるものだったと回答した一方で、RRATVJ終了後のサービスや、他の団体への支援委託に関しての改善の余地を感じているといった意見もありました。支援の内容についても、職探しのサポートのみならず、国による法の違いから複雑化する離婚手続きなどの法的支援、住宅支援、こどもの学校の手続きなどの本人以外の家族に対するサポートも求められていることが明らかになりました。
 
RRATVJで出身国に帰国する人々を含め、移住者の数が増加している中で、社会復帰支援の必要性はさらに複雑になり、包括的になり、かつ高まっています。個々人によって置かれる状況が実に多様であり、また、国ごとの制度や文化の違いに影響されることを念頭に置きつつ、この報告書が、フィリピンでのRRATVJの支援のみならず、他の国での社会復帰支援における今後の支援改善に寄与することを期待しています。

報告書の本文(PDF)はこちらからダウンロードしてください。

人身取引被害を受けたフィリピン人被害者の出身国における社会復帰状況に関する追跡調査(日英)
Tracer Survey on the Reintegration of Flipino Victims of Traffiking in Japan into their Home Country (Japanese/English)