IOMニューヨーク事務所

平和構築・気候変動安全保障 担当 (Associate Programme Officer)

長澤 薫(ながさわ かおる)

 

■プロフィール

【略歴】日本の大学を卒業後、大手メーカー海外営業部にてアフリカでのビジネスに従事。その後米国にて行政学修士号取得。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日事務所や、国際連合児童基金(UNICEF)ニューヨーク本部でのインターンやコンサルタントとしての勤務を経て、2022年度JPO試験に合格。2023年より現職。紛争予防と平和構築に関する取り組みに加え、気候安全保障メカニズムへのIOMの参画に係る業務を担当。


Q:国際協力に関心を持ったきっかけや、学生時代について教えてください。

A:高校時代の春休みに、姉妹校への短期交換留学プログラムに参加し、アメリカを訪れたことがきっかけです。日本に生まれ、日本で育った自分は、生徒のバックグランドが多様であることに衝撃を受け、また、共に切磋琢磨する姿がかっこいいなと感じ、将来はグローバルな環境で働きたいと思うようになりました。

大学では国際関係を専攻し、学外ではNGOでのインターンやボランティア、勉強会や国際会議などに積極的に参加し、気候変動を中心としたさまざまな分野の勉強に励みました。

 

Q: JPOとして勤務を開始するまでのキャリアについて教えてください。

A:大学卒業後は、エンジニアであった父親の影響もあり、「日本の技術で世界を良くしたい」と考え、大手メーカーに就職しました。アフリカチームに配属され、国際協力機構(JICA)を通じた日本政府の政府開発援助(ODA)事業を含む様々な業務を担当しました。単身でのアフリカ出張などを通して、人道支援に携わりたいという気持ちが強くなり、国連でのキャリアを目指すことにしました。

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Q: その後、UNHCR駐日事務所、そしてUNICEFニューヨーク本部でのご経験について教えてください。

A:UNHCR駐日事務所でのインターンシップは、3つの部署にて幅広い業務に携わる機会をいただき、とても勉強になりました。

その後、UNICEFニューヨーク本部の緊急支援局(Emergency Office)では、中東チームのサポート業務に従事していました。しかし、任期中にウクライナ紛争が発生したことから、新たに編成されたウクライナ危機対応チームに参加することになりました。大変なこともありましたが、国連の緊急対応に初日から携わり、基礎を学べたことは、現在の平和構築の仕事にも大変役立っており、この経験が人生のターニングポイントであったと感じています。この時の仕事が上司に評価され、インターン終了後もコンサルタントとしてチームに残ることになりました。

 

Q:現在のIOMニューヨーク事務所でのお仕事について教えてください。

A:現在はIOMニューヨーク事務所で平和構築・気候変動安全保障を担当しています。気候変動安全保障は近年、国連全体で注目されている領域であり、他の国際機関と協働する中でIOMとしてのポジショニングも行います。

また、国連安全保障理事会や国連総会が開催される時期には、国連事務局とIOMジュネーブ本部の橋渡し役として、平和構築の観点から議論内容をまとめ、上司へ報告する業務などで大忙しになります。その他、リエゾンオフィスとして様々な資金の要請に関わることもあります。

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Q:IOMならではのやりがいや、組織としての特徴はどう感じますか。

A:「人の移動」という分野は、国連のほぼすべての活動と関連しています。この分野横断的な課題(cross cutting issue)に取り組むことは、多様な知識のみならず、他の国際機関との連携が必要不可欠ですので、チャレンジングである反面、大きなやりがいを感じています。

そしてIOMは、「人を大切にする機関」だと思います。JPO向けのトレーニングが非常に充実しており、現在もメンタリング・コーチングに関するトレーニングを受講しています。人を育てるカルチャーがあることは素敵だと思います。

 

Q:これまでのキャリアで心がけたことや、大変だったこと、その乗り越え方などを教えてください。

A:UNICEF本部にてインターンシップをしていた時に、契約期間終了後のキャリアに大きな不安を抱えていました。ニューヨークは物価も高く、生きていくのも大変であったことから、日本へ帰国して就職すべきか悩んでいました。

この時期に、多くの方々に相談に乗っていただいたことには、今でもとても感謝しています。家族や上司のみならず、大学・大学院のOBOGや国連の邦人職員、世界中のUNICEF職員など、知らない方にもメッセージを送り、2カ月で60人以上の方とお話させていただきました。知らない方に突然メッセージを送ることは勇気が必要でしたが、皆さんからの親身なアドバイスに励まされ、UNICEFに残る決断をしました。

 

Q:今後の展望を教えてください。

A:ニューヨーク事務所での、深みのある、政策レベルの仕事に大きなやりがいを感じているため、自身の語学のレベルを向上させ、さらに精度の高い仕事ができるよう、一層努力していきたいです。また、日々仕事と勉強に励む中で、関心分野がどんどん広がっていくため、現場と本部という2つの括りに囚われず、色々な仕事にチャレンジしたいと思っています。

 

Q:今後国際機関を志す人に、メッセージをお願いします。

A:ご自身が好きな分野をとことん突き詰めてほしいと思います。学生時代から現在に至るまでを振り返ってみると、自分が面白いと感じたことをコツコツと勉強してきた結果、専門性が磨かれ、それが結果的に周りからの評価にもつながったように感じています。キャリアを築く上での有利不利に囚われず、好きな勉強を究め、時に違う分野へも舵を切りながら、是非わくわくする方へと、一歩ずつ歩んでいってください。