第112回IOM総会 IOM事務局長「国境を越えた移動のルールにとって将来の見通しと利用のしやすさこそが重要」
IOM加盟国174カ国の代表が集まり今週、ジュネーブで総会が開催された。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックを封じ込めるために、111,000以上の新たな移動に関するルールが採用されたことを受け、いかに予測可能で利用しやすい、国境を超える移動の選択肢を人々に提供できるかについて、検討を行った。
「こうした措置のほとんどは入国制限ではなく入国条件ですが、結果として生じるルールの複雑な組み合わせは、範囲と適用が頻繁に変更され、特にワクチン未接種の人々に、国境を越えた移動を見合わせさせることになりました。」
ヴィトリーノIOM事務局長は、48カ国の国家元首、大臣、副大臣が発言した、IOMの第112回総会のハイレベルセグメントの開会に当たり、このように述べた。
IOMが設立70周年を迎える今年の総会は、南アフリカが先週、世界保健機関(WHO)によってオミクロンと呼ばれる新しいコロナウイルスの出現について調査していることを明らかにして以来、世界中の政府が厳格な新しい渡航制限を発表したのとまさに時を同じくして開催された。
ヴィトリーノ事務局長は、人々の健康を守り、ウイルスの感染を減らすという各国政府の基本的な責任を認めながら、IOMの加盟国に対し、対策を調整し、移動の不平等を悪化させずに将来のパンデミックに備えていくために協力を要請した。
「私の大きな懸念は、国際協力がなければ、我々は移動に関して非常に不健全な状況に陥る可能性があることです。もし、変異種が急増して、将来の健康危機が発生すると想定した場合、もちろんこれはあり得ることとして当然検討しなければならないことですが、次のパンデミックにいかに備え、そしてその際必要となる移動の削減が、安全にかつ予測可能な形で実行されるために、加盟国が今後検討されていくことを期待します。」と事務局長は語った。
「しかし、我々は社会と経済上の観点から、現在はパンデミックを終結させる方に焦点を当てており、特に新しい変種オミクロンのことを考えると、今後のパンデミック収束、そしてその後の移動の回復までにはまだまだ長い道のりがあることを認識しています。我々はCOVID-19による移動する人々への深刻な影響を認めざるを得ません。移動途中で足止めされた人々、国境を挟んで離れ離れになった家族、仕事を失って故郷にも帰ることができない人々などへの影響です。」
ヴィトリーノ事務局長は、2019年12月に中国の武漢からコロナウイルスの最初の症例のニュースが出て以来、渡航制限や国内の移動規制などの国境管理関連の対応に関して、根拠に基づいたアプローチを推奨してきた。そして、COVID-19のロックダウンがもたらす、社会経済的発展と持続可能な開発目標(SDGs)の達成への深刻な影響に警鐘を鳴らしてきた。
「我々は、渡航制限がCOVID-19の適切な封じ込めに、どの程度、いつ、どのように効果を上げたのかをよりよく理解し、健康危機の過程でのさまざまな対策と制限の比較可能な利点とリスクを、的確に評価する手法を開発する必要があります。」と事務局長は訴えた。
「これはもちろん、状況と我々の対応できる範囲にも関わりますが、現在出てきている新たな事実は、国境の閉鎖という施策はウイルスの拡散を遅らせるために一定の役割を果たす一方で、ウイルスが一旦国内で流行すると、効果は低くなりがちであるということを示唆しています。」
国際社会は、国境を越えた移動に際した人々の健康を保護し、移民を含む全ての渡航者に対して適切な費用、および入国に関する対処可能な基準の導入、将来の見通しがつく人の移動を促進するべきだ、と事務局長は述べた。
「IOMはこの点に取り組み、国境施設の最前線にいる出入国管理官のためにCOVID-19のための標準作業手順(SOPs)を開発し、国境管理当局による入国者の健康状態のチェックを支援しました。しかし、世界中、特に陸地の国境や発展途上地域では、依然として対応できる能力に課題があります」とヴィトリーノ事務局長は述べた。
ヴィトリーノ事務局長は、ワクチンへのアクセス、法的地位、渡航のための文書・証明書など、そして新しい渡航条件によって取り残される可能性のある国々へのデジタルインフラ面でのサポートについて、移民や避難民の間で深刻な不平等が存在していると警鐘を鳴らした。
「ワクチン接種率の低い国や感染リスクの高い国から来た人々は、自分たちの地域内でさえ移動するのが難しく、より費用がかかるようになっています。我々は、誰一人、どの国も取り残してはなりません。」
IOMの年次総会は、組織の方針、プログラム、および活動をレビューし、予算と支出を精査の上承認し、戦略的目標の達成に向かって行動するために開催される。