IOM報告書:気候変動による人の移動―根拠に基づいた政策、行動が重要
気候変動や環境劣化、災害が現代における人の移動のパターンに変化をもたらしているなか、数々の国際的な合意や枠組みによって、気候変動と人の移動の問題に同時に取り組む緊急性が立証されている。今こそ、これらの合意を実践に移し、気候変動の影響による人の移動への行動を加速させなければいけない。
本報告書は、それら行動についての洞察や提言を提供している。特に、既存の知識およびこれまでIOMが各国政府や国連機関、その他多くのパートナーと協働してきた経験を基に、政策面から見た人の移動と気候変動の相関関係を説明し、そして政策立案者へ向けた推奨される行動を数多く提言した。 これらの提言は、将来の行動の指針とするために実践的な事例を使って説明されている。また、IOMの2021-2030年度 移住・環境・気候変動に関する計画書に基づき、(1)今後移動する人々、(2)現在移動中の人々、(3)留まる人々、それぞれの解決策を提示している。
本文中で示される重要な事実の抜粋
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過去10年間、台風や洪水、干ばつなどの天候に関連した災害により生じた避難民は、年間平均で2,160万人にのぼる。そのうち60%以上が中東、北アフリカ、東アジア、太平洋地域に集中している。(Global Report on Internal Displacement 2022. IDMC, Geneva 国際避難モニタリングセンター)
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2030年までに、世界人口の50%が洪水や嵐、津波のに晒される沿岸沿いに住むと推計される。(Technical Summary. In: Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability. Contribution of Working Group II to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change. Cambridge University Press, Cambridge and New York. IPCC 気候変動政府間パネル)
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気温が2度上昇すると仮定した場合、2050年までに世界人口の37%が日常的な酷暑を経験し、3億5,000万人以上が居住不可能な気温に晒されると推計される。(COP24: What cities are likely to experience. UN-Habitat 国連人間居住計画)
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気候変動による直接的な影響と、農業生産力の低下などの二次的な影響をあわせると、2050年までに4,400万人から2億1,600万人の国内移住者が生じると推計される。(2021 Groundswell Part 2: Acting on Internal Climate Migration. World Bank, New York. 世界銀行)
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気候の人の移動への影響は、地域や社会階層により異なる。特に、最貧困層の移住が阻害されるであろう。(2022 Climate change increases resource-constrained international immobility, Nature, 12, 634/641. Benveniste, H., M. Oppenheimer and M. Fleurbaey)
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