命がけの旅路』 最新版発行 - 死亡・行方不明の移民の身元確認と追跡

©IOM 2016IOMはこの程、『命がけの旅路 第2巻 - 死亡・行方不明の移民の身元確認と追跡(原題:Fatal Journeys, Volume 2: Identification and Tracing of Dead and Missing Migrants)』を発行した。この報告書では、1996年以来、世界で6万人以上の移民が、海路や陸路で死亡、または行方不明になったと推計されている。

2015年には、約5,400人の移民が死亡、または行方不明になったと記録された。2016年にはすでに、3,400人以上の移民が死亡・行方不明となっており、その8割が欧州に海を渡ろうとした移民。

実際の移民の死亡数は当然もっと多い、とIOMグローバル移住データ分析センター(GMDAC)所長のフランツ・ラツコは説明する。移民の海や遠隔地での死については目撃証言や記録がほとんどないので、数えきれないほどの命が人知れず失われているという。

「しかし、死亡した移民には何が起こったのでしょう。家族は誰で、何が起こったかを知ることはないのでしょうか。命が失われた後の更なる悲劇は、亡くなった移民が名前さえも知られないことです。」

この報告書は、こうした重要な疑問に答えようとした。各国政府機関によって、死亡や行方不明の移民に関してどのような追跡・身元確認作業が可能で、またすべきなのか、問うている。更に、こうした悲劇の陰で忘れられた被害者、つまり移民の残された家族を支援するために何をすべきなのか、述べられている。緊急的な課題にも関わらず、あまり公の議論に上っていない。

行方不明者についての既存の研究によれば、行方不明者の家族は、経済的、社会的困難だけでなく、極度の精神的苦痛を経験するという。

この報告書は、こうした辛い状況は、非常にありふれていることを示唆している。大多数の移民の遺体は発見されず、発見されたとしても多くの身元は確認されない。2015年の地中海の例では、死亡したと思われる半分以下しか遺体が収容されていない。ミャンマーやタイに残された家族は、家族がただただいなくなってしまったという話をしている。米国・メキシコ国境地帯では、アリゾナに拠点を置き行方不明になった親戚・家族を探す人々を支援しているNPO、Colibri Center for Human Rightsが約2,700人の行方不明者を記録している。

「家族は混乱し、複雑な状況に置かれ、危険を冒しても行方不明の家族を探そうとします。」と、Colibri Center of Human Rightの代表を務める法人類学者ルビン・ライニキーは言う。ライニキーは、報告書の中で米国・メキシコ国境に関する部分を執筆したが、「メキシコとの国境沿いで、移民や移民の遺体が行方不明になることは、大きな人権の危機です。いかに国境を超える移民が弱い立場にあって、軽視され虐待されているかがわかります。」と語った。

行方不明者を追跡するシステムは、国ごとにも国際的にも存在するが、行方不明になった移民には適応されておらず、移民の家族の多くも利用できない。多くの場合、現地の国の死亡届出・身元確認システムは、国際移住の観点からの特別な事情に応じて適切に構築されたものではない。

しかし、身元確認の割合が低いことだけが課題なのではない。他の人道危機や交通事故などと異なり、当事国政府にとって移民の身元確認の優先順位は低く、移民や難民の死はしばしば通常の人道的な対応とは異なる例外とみなされる。

「国からの支援がほとんどなく、残された家族は、様々な機関や官僚機構などの非常に混乱して複雑で、場合によっては危険な、漠とした障害を越えていかなければなりません。悲しみと希望のはざまで、家族は何年もの間、ときには生涯を通じて捜索を続けるのです。」とラツコは言う。

この報告書は、人道的義務への関心を高めるため、ベルリンにあるグローバル移住データ分析センターと世界各地からの専門家によってまとめられた。5つの行動計画を推奨し、まずは移民の死についての捜査や身元確認は国際法上の義務である、としている。残された家族に捜索システムへのアクセスがあるべきだし、埋葬場所を訪れることができるようにすべき。また、国際的、そして地域のシステムを構築するなど、死者の身元確認のために全力を尽くすべき、としている。報告書では更に、どのように残された家族を支援し、身元確認メカニズムを改善するかを研究するグローバルプログラムの設置を提案している。

身元確認や追跡の問題に加えて、世界での移民の死や行方不明について、最新のデータも紹介している。IOMのMissing Migrant Projectが集計しているもので、移民の死についてまとめた既存の唯一のグローバルなデータベース。

グローバル移住データ分析センターがベルリンで来週主催する、身元確認と追跡に関するワークショップで、この報告書が発表される。地中海地域を始めとした世界から専門家を集め、協力関係を構築し、身元確認の方法が改善され、家族の特別なニーズに答えるためのアイディを出すことが目的。

ウィリアム・レイシー・スウィングIOM事務局長は、報告書の第2巻が発行されたことを歓迎し、「私が繰り返し言っているように、まずは世界でも危険な移住ルート上で人名救助が最優先課題です。人名救助に当たりながら、失われた命と悲しみにくれる家族についても考えなければなりません。」と語った。
報告書全文(英文PDF)は、こちら(IOM本部ウェブサイト出版物コーナー)からダウンロードできます。
https://publications.iom.int/books/fatal-journeys-volume-2-identification-and-tracing-dead-and-missing-migrant

報告書についての更なるお問い合わせはこちらまで
 Frank Laczko, IOM Global Migration Data Analysis Centre, Berlin
 Tel: Direct: +49 (0) 30 27877820
 Mobile: +49 (0) 151 11676795
 Email: flaczko@iom.int