津波が残した子どもたちの笑顔の奥の悲しみ 2005年2月 茅和伊

スマトラ沖地震・津波支援の現場で活動する職員からの報告です。

津波が残した 子どもたちの笑顔の奥の悲しみ

2005年2月8日

IOMインドネシア・バンダアチェ事務所
茅 和伊(かや かつい)

津波によって、インドネシアで命を失った人の数は約22万7千人に上るとされています。特に被害が集中したアチェの州都であるバンダアチェだけを見ると約45%、更に西海岸沿いにあるチャランという町では約90%の人口が一瞬にして姿を消してしまったことになります。そして津波から一ヶ月経った今も、国内避難民としての生活を強いられている人の数は42万6千人と推定されています。

 
アチェに住む人々の大部分が家族、友人、あるいは同僚を失ったと言われており、避難民の多くが、災害のショックで恐怖感、不安感を訴えています。WHOによると、今後津波の影響を受けた人の50%が深刻な精神的苦痛を抱え、その内5-10%のケースが精神障害に発展するであろうと予想されています。人間の人格が形成され、感情が発達するのは特に幼少期と言われますが、両親や家を失うといった劇的な経験は、子どもたちの未来にどのような影響を与えるのでしょうか。

はしかの予防接種で訪れたトゥノムの町はほぼ壊滅状態で、現在7,493人が周辺のキャンプなどで避難生活を送っています。そこで見た子供たちは皆、好奇心で目をきらきら輝かせ、一見津波のことなど忘れてしまっているかに見えました。

地元の教師や子どもたちと直接話をしてみたところ、全ての人が、避難生活を送る子どものほとんどが精神的苦痛を抱えていると口を揃えていました。友だちと一緒にいる時は明るく振舞っていても、夜になると不眠や悪夢に悩まされる子どもや、授業中も集中力に欠け聞かれた質問にきちんと答えられない子どもが多くいます。余震が起こるとパニック状態になり、一斉に外に飛び出したりします。特に両親を亡くした子どもは友だちと遊ばずに、今でもぼーっとしたり、しょんぼりしていると言います。あまりの悲しみにやせ細ってしまった子どももいます。

家族を失うという劇的な経験の直後、このような精神状態に陥ることはごく自然なことでしょう。しかし災害から一ヶ月以上経った今、子どもたちに勉強の楽しさ、人生の素晴らしさをもう一度思い出してもらいたいのです。私たちは今後、子どもたちの笑顔の奥にある悲しみを、未来に進む強さに変えるために、できる限りの努力をしなければなりません。