フィンランド インターン報告 2007年3月 海老原周子

フィンランドのIOMヘルシンキ地域事務所におけるインターンの体験記を、海老原周子さんが寄せてくれました。

IOMフィンランド事務所でのインターン報告

   2007年3月  海老原周子

IOMはフィンランドにおいてバルト海沿岸・北欧諸国の地域事務所として、自主的帰還および社会統合支援、移送支援等の様々な案件を実施しています。私はインタ-ンとして2007年1月より3月まで、社会統合ユニット(Integration Unit)の案件の一つ「文化オリエンテ-ション」の実施と内部評価の補佐を行いました。

フィンランド受入難民に対する文化オリエンテ-ション

フィンランド政府は、年間750名の難民を受入れています。これに基づき、IOMヘルシンキは、これからフィンランドで新たな生活を始める難民に対して2004年より包括的な文化オリエンテ-ションを実施しています。自国の文化や伝統、生活様式とまったく異なる環境での新たな生活は、誰にとっても不安や期待が伴いますが、受入難民がフィンランドにおいて生活基盤を一から始めるのはとても大変なことです。

文化オリエンテ-ションは、このような受入難民に対し、フィンランドに関する知識を提供することで、新たな生活への不安やこれから直面するであろうカルチャ-ショックを少しでも和らげ、ホスト社会での受入難民の自発的な行動を支援してきました。IOMの過去の実績を元に、フィンランドに適した文化オリエンテ-ションのカリキュラムが開発され、専門にオリエンテ-ションを行う文化オリエンテ-ション・トレイナ-がこのカリキュラムに沿ってオリエンテ-ションを行います。

3日間かけて政治・経済・文化といった基礎的な知識から教育・仕事・住居・福祉サ-ビスなどの実生活に必要な情報を提供し、また、新しい国で生活を始めるにあたって、どのような困難に直面するのか、どういったカルチャ-ショックを経験するのだろうか、という問題を考えるワークショップを通じて、新天地での生活に対して、より具体的に心構えが出来るように支援します。

タイにおける文化オリエンテ-ション

2007年3月、タイにおいてフィンランドに定住予定のミャンマ-難民350名に対する文化オリエンテ-ションを行うことが決定しました。フィンランドにおけるミャンマ-難民の受入経験は浅く、政府や各自治体のパンフレットや資料で、ミャンマ-の言語で書かれているものはまだ数が限られています。

そこで、オリエンテ-ションをより効果的なものにするべく、トレイナ-が新たな教材として、前年IOMによる文化オリエンテ-ションを修了し現在フィンランドで生活している元ミャンマ-難民の日常を追ったビデオを作成し、私はその編集作業補助にあたりました。今回のオリエンテ-ションでこのビデオを流すことで、フィンランドがどのような国なのか、人々がどんな生活をしているのか、より具体的な理解を深める事が可能になると共に、文字の読めない難民達も映像を通じて理解することができます。

 
また同じ背景を持った難民の声を伝える事で、よりミャンマ-難民のニ-ズに沿った情報提供が可能になります。この業務を通じて、新しい環境で生活するにあたってどのような情報が必要とされるのか、どういった状況で困難に直面するのかという問題に対して、自分自身の理解を深めると共に、難民の視点から考える重要性を実感しました。また、受入難民の定住予定先である各地方自治体からの情報をとりまとめましたが、社会統合につながる支援を提供する上では、関連機関との連携が必要不可欠だということを身をもって経験しました。

■受入難民のその後

2007年がこの文化オリエンテ-ションの最終年度となるにあたって、本プロジェクトがどれだけ受入難民のフィンランドでの新生活に寄与したかを調査する内部評価の一環として、定住した受入難民家族の一日に密着し、インタビュ-を行いました。

「新しい地での生活することへの不安はあったけれども、文化オリエンテ-ションで事前知識があったし、新しい国、異なる文化での生活に対して心構えはあった。新しい環境に慣れるには時間がかかる事は承知している。とにかく早く社会の一員になれるよう努力したい」

文化も生活様式も異なる国で、新しい生活を築こうと強い意志を持ち努力している姿に心打たれました。本オリエンテ-ションが、フィンランド社会へのより円滑な統合に寄与することを願います。

このような貴重な経験を得るインタ-ンの機会を提供してくださったIOM駐日事務所、ヘルシンキ地域事務所に感謝すると同時に、2007年3月9日に外務省・IOM共催で「外国人問題に関する国際シンポジウム- 移民の社会統合における国際的経験と日本の課題 -」が開催されましたが、今回のインタ-ンの経験を踏まえて、何らかの形で日本におけるより円滑な社会統合を支える一助になれたらと感じています。