ケニア北部の平和と安定を目指して 2013年1月 寺西悦子

世界各地で活躍するIOM日本人職員からの報告です。

ケニア北部の平和と安定を目指して

2013年1月
IOMケニアカクマ事務所
プロジェクトマネージャー 寺西悦子

IOMとの関わり

私のIOMとの関わりは、外務省平和構築人材育成事業の1期生として、IOMインドネシア・アチェに派遣されたことでした。紛争後のアチェで元兵士の社会復帰事業に従事し、その後、アソシエートエキスパート制度(外務省)を通して、IOMネパールにて人身取引被害者の自立支援や労働移民管理などの事業運営に取り組みました。そして、昨年からはIOMケニアにて、資源紛争の予防、2011年に起きた東アフリカでの干ばつに対応した緊急人道支援の事業を運営しています。

ケニアにて

ケニアは東アフリカ諸国の中では経済的に発展しており、南スーダン、ソマリア、エチオピア、コンゴなどの周辺諸国からの難民を多数受け入れています。しかし、半乾燥地帯である北部ケニアでは、干ばつやエルニーニョ現象による大雨など厳しい自然環境に晒されており、特に、近年の周辺国からの難民の流入により、難民と牧畜を営む地域住民との間で、限られた資源を巡っての争いや治安の悪化は、国家の安定・発展にとって深刻な課題となっています。

IOMはケニアにて、2008年の大統領選挙後の暴動発生から、日本政府の支援を受けて、平和と生計支援を軸に国内避難民、難民および牧畜民である受け入れ地域住民への支援を行っています。私が現在担当している緊急支援というのは、平和構築・生計支援・保健医療の3つの分野での支援を行っています。この支援を通して、北部ケニアのレジリエンス(対応力)の構築、気候変動に対応できることを目指しています。

支援内容

平和構築分野では、具体的にメディアや地域ネットワークを通して平和メッセージを発信したり、地域集会での啓発活動、紛争解決への対話集会の開催、被災者への心理カウンセリングを行っています。地域の指導者や平和委員会のメンバーに対しては、紛争解決のための研修を実施して人材育成も図っています。また、平和友好のためのスポーツ・文化イベントを開催し、難民と受け入れ地域住民の平和的共存を目指しています。(写真1、2)



生計支援分野では、牧畜民である難民の受け入れ地域住民を対象に、生活の糧である家畜に焦点を当てた支援を行っています。

ケニア政府畜産開発省と連携して、家畜へのワクチン投与や畜産家への研修、家畜用飼料の支援を行っています。また干ばつに適した代替収入源となる農作物生産向上のための物資を支援したり、農業省と共に農家に対して研修を行っています。他には、牧畜業の代替として、若年層を対象にニーズに応じた職業訓練(コンピューター、車両運転、裁縫、染料、美容師、塗装等)や小規模ビジネスの起業支援も行っています。さらには北部ケニアは慢性的に深刻な水不足であることから、水設備の設置および補修を行っています。(写真3、4、5)

保健医療分野では、牧畜民、国内避難民、難民に対して感染症の治療、予防とコントロールを目的として、ケニア政府保健省の要請に基づき、医療施設のない地域へ巡回移動クリニックで医師、看護師を派遣しています。地域保健所に対しては、医療物資の提供と設備補修と合わせて、地域保健員や看護師に感染症予防の研修も実施しています。同時に、小学校や各村々を訪問し、公衆衛生の啓発活動を実施し、経口補水液、水殺菌用塩素タブレット、寄生虫予防薬を配布しています。(写真6、及びページ冒頭の写真)

 

現場での仕事を通して

私は現在、首都ナイロビから約1,000キロ離れたカクマという約10万人の難民が暮らす町に駐在しながら、プロジェクト対象の全4地域を担当しています。それぞれが離れた地域にあるため、月の半分以上はこれらの地域に赴き、事業実施状況の確認や現地職員、現地政府職員、地域住民、国連機関職員、NGO職員と対話し、より効果的な成果が生み出せるように、必要に応じて軌道修正を行っています。

各フィールド事務所から定期的に報告書は届くものの、やはり現地に実際に赴き、人々と対面することでさまざまな課題、普段書面からは見えてこない現地職員が直面する日々の困難が見えてくるので、積極的にフィールドに行くことを心がけています。また、地域住民からの感謝の声だけではなく、率直な批判や意見はプロジェクトを運営していく上でとても大切なことなので、真摯に受け止め、改善につながるように努力しています。

緊急支援は開発支援と比べると、短期間での一時的な支援であると感じています。しかし干ばつや資源紛争は、住民にとっては長期的に直面する課題であり、支援の継続性が問われてきます。現在の仕事を通して、IOMが北部ケニアで実施している多岐にわたる緊急支援を、限られた期間内に、効果的に且つ持続性を考慮しながら実施することがいかに重要かを実感しています。本当に支援が必要な人々に、適切な支援が届くように、現地職員約50名、ケニア国政府職員、地域住民と共に、日々試行錯誤しながら取り組んでいます。