ソマリア調整事務所でのインターン体験 2015年5月

2015年5月
国際移住機関(IOM)ソマリア調整事務所
インターナショナル・プロジェクト・デべロップメント・インターン
湯浅 みさと

私が現在勤務する国際移住機関(IOM)ソマリア調整事務所は、治安上の理由からケニアの首都ナイロビに所在していますが、ソマリア国内にも3つの地域事務所を持ち、全体で約200名のスタッフを有する、比較的大規模なミッションです。活動内容も多岐に亘り、国内避難民(IDP)の支援、ケニア国内の難民キャンプや近隣諸国からのソマリア帰還民支援などの緊急支援業務から、移住に関する政府への技術協力、人身取引対策などを幅広く手掛けています。

私の所属する保健担当の部署(Migration Health Division)では、他国や他都市からの移民と帰還民、遊牧民などを含む広義の移動する人々、国内避難民とその受け入れコミュニティを対象とした保健医療支援や医薬品の提供、妊産婦や子どもの栄養改善、安全で清潔な水と衛生の提供、ジェンダーに基づく暴力(GBV)被害者の支援と予防の促進などを活動の中心としています。また、その他の部署と協力し、生計や食糧支援などと組み合わせた現場のニーズに沿った包括的な支援ができることが、IOMソマリア調整事務所の強みでもあります。

直近では隣国イエメンの政情不安と人道危機の勃発により、2万人を超える避難民が続々と国外へ脱出しており、IOMも人道的緊急退避手段の提供などの支援を行うとともに、退避先での二次的避難民の発生を防ぐためにも、受け入れ国での支援強化に力を入れています。イエメンから約400kmを隔てた対岸のソマリア沿岸部には、直近の数ヶ月で既に9,000人以上のソマリア帰還移民、イエメン難民、ジブチ、エチオピアやケニア、シリアなどソマリアとイエメン以外の第三国出身の避難民が退避してきており、長引く氏族間対立と無政府状態により荒廃した経済と高い失業率に苦しむソマリアにおいては更なる負担の増加と人道的被害が予測され、迅速な対処が必要とされています。ソマリア調整事務所はこれらの帰還民や避難民に対し、水や食糧、医療、安全情報、移動手段の提供などの緊急支援を地域政府や他の国際機関と協力して行っています。
ソマリア調整事務所にインターンとして赴任する以前の私は、民間企業、政府機関、国際開発NGOで計8年間勤務し、特にNGOで人口・人材流出の激しい中米・カリブ地域と東南アジア諸国を担当したことで、移住と開発の関係に強い関心を持ちました。その後、開発行政学を学んだ大学院では、移民問題に関する学生ワーキンググループの代表として活動する傍ら、UNICEF本部の移住と社会政策分野のインターンとして、移住と開発に関するグローバル・フォーラムの準備や、国際機関の代表レベルの協議体であるグローバル・マイグレーション・グループによる若者の移住に関するレポート(http://www.globalmigrationgroup.org/migrationandyouth)の編纂に携わりました。その間、国際機関のウェブサイトや外務省の国際機関人事センターから送られてくるリストを元に空席公告への応募を続け、週末を利用して仕事の傍ら、外務省委託事業の国際機関向け人材育成研修にも参加しました。こうした研修や仕事上の繋がりを通じて様々な国際機関で働く方たちと知り合う中で、途上国の現場での勤務経験の大切さを痛感していたところ、国際協力キャリア総合情報サイトPARTNERで偶然ソマリア調整事務所でのインターンの募集を見つけ、応募を決意しました。仕事を退職してインターンとして赴任するには勇気がいりましたが、裨益者のニーズに寄り添い、日本の高い技術や官民連携スキームなどを積極的に取り入れるソマリア調整事務所の革新的な姿勢と、政府間調整と現場での人道支援実施の双方を行うIOMの独自性に惹かれ、書類選考、筆記試験、電話面接を経て採用に至りました。

現在は、新規プロジェクト資金獲得のための企画案の作成、他の国際機関やパートナーNGOからの情報収集、データ分析、各国政府や国連などのドナーへの報告書作成などに携わる傍ら、情報通信技術(ICT)を活用したリアルタイムでのデータ収集の導入や分析、ドナー向けの活動紹介資料の作成などにも幅広く取り組んでいます。国際機関やNGOとの外部の調整会議にも単独で積極的に参加させて貰い、所属部署内外から報告書のレビューやコメントを求められるなど、仕事のやりがいは大きく、同僚の前向きでオープンな受け入れ姿勢に感謝しています。

2015年3月に着任してまだ僅か3ヶ月ですが、複雑な政治構造と、豊かな文化・歴史的背景を持つソマリアという国は、知れば知るほど奥が深く、学ぶことが尽きません。一方で、国際機関職員や政府・大使館関係者を標的にした襲撃事件など、現地の緊張状態は続いており、前述のイエメンの政情悪化や、ガリッサ大学の襲撃事件を契機としたケニア国内での対ソマリア感情の悪化を受けて、帰還民や国内避難民支援の緊急性は高まるばかりです。インターンとしての経験がすぐに国際機関職員としての仕事に繋がる訳ではありませんが、今後はジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)制度やコンサルタンシーの獲得を目標にしつつ、人道・復興支援、移住と開発、若者のエンパワメントに関する分野で経験を積み、困難な環境にある帰還民や避難民の支援に積極的に貢献していきたいと思います。