IOM日本人職員フィールドレポート 番外編

ソマリア 日本政府の支援による保健事業IOMソマリア事務所訪問記

私は大阪大学法学部国際公共政策学科2回生の藤崎航太郎といいます。
将来的には国際的なキャリアを築くことを構想しつつ、大学では国際関係論や統計学を勉強しています。
 
今回私がIOMソマリア事務所を訪問した2016年9月23日から、わずか4日前にあたる2016年9月19日に、IOMは関連機関としての国連加入を果たし、新たなポジションを確立した訳ですが、教科書上では学ぶことのできない国連による活動の最前線を、そして、一見すると普段日本で過ごしている私たちにとってやや馴染みが薄い「(難民・移民などを包括した上での)移住」というトピックを、実際の視察活動を通し具体的に追及していく機会をいただくことができたため、ここにその体験を記します。
 
はじめに、IOMソマリア事務所と聞くと、その所在地はソマリアだろうと考えてしまいますが、現地における治安などの問題から、あくまで事務所はケニアの首都ナイロビに位置しています。ナイロビには国連事務局の4つの主要事務局のうちの1つである国連ナイロビ事務局がありますが、IOMソマリア事務所は他の国連機関と軒を連ねることなく、過去にホテルとして利用されていた建造物に、独立してその本拠地を構えているのです。
 
いよいよオフィス内に立ち入ると、まずお出迎えしていただいたのは保健部門と防災対策部門の伊藤さん。

質疑を通して私は、国連は職員の福利厚生を重んじる一方で、IOMは1万人以上のスタッフそれぞれのポジションに関わらず、エコノミークラスでの出張を定めることで経費削減を図っていることや、国連が政策やガイドラインの立案という側面から問題解決の糸口を見出すのに対し、IOMは現場に強く、よりローカルな活動を展開していることなどといった、他の国連機関と対比した上でのIOMのユニークさ、強みについて伺うことができました。

ソマリア 国内避難民に対する給水事業 ©IOM 2016また、「移住」という概念を指針に据えて活動するIOMは、「難民」「移民」を始めとし、「国内避難民」とよばれる自国から出れない人々をも含む、かなり広義的な「移住」を対象としていることや、この「移住」というイシューは先進国、開発途上国に関わらず、年を経るにしたがって、大きな関心を集めていることについてもお話しいただきました。確かに、2016年9月19日の国連加入も、国家を横断的に往来する人々の増加につれて「移住」がより国益に関わる問題として実体化し、各国家が協力してそれに取り組む傾向を反映しているといえそうです。

およそ一時間にわたった質疑における質問の一つに、「国連に関連機関として加入することが新たな変化を、例えば、先述したIOMの特質を損ねてしまうおそれなどをもたらすことはあるか?」というものがありましたが、「主に法的な位置づけが変わる一方で、現場における変化はほとんどなく、そこには依然としてIOMが貫いてきた活動形態があり、続いていく。」という回答をいただき、今後もIOMのカラーが色褪せることなく、その活動に脈々と受け継がれていくことが確かめられ、この先の活躍に一層の期待が募りました。

その後、私は緊急援助のコーディネーターのサムさんからお話を伺いました。IOMのミッションを長期間にわたる支援と緊急的な対応を要する短期間のものとに大別した上で、それぞれの特色や各分野で求められている活動についての説明をいただくとともに、ソマリアという国でそれらをこなす難しさを、特にキャパシティビルディングの観点からお話いただき、私はソマリアという国とそこでの支援の概観をよりはっきりと描くことができました。

最後に、学生へのメッセージとして「人々が行きたがらない場所で仕事をするのがいい。そこでの試練を通してより強くなることができるし、そういった場所で業績を挙げることが大事だ。」というお言葉を頂きましたが、ソマリアという地で支援に携わるスタッフとしての熱い気概を感じるとともに、なかなかこうした冒険心溢れるメッセージを頂くことも多くないため、改めて将来自分が思い描くキャリアへ進む動機付けを得ることができました。
 
次いでお話を伺ったのは警備部門のシェイキさん。ソマリア出身であり、今なお支援を通してソマリアと関わり合っている現地の方と話す機会は初めてであり、ここでのエピソードの数々がよりソマリアの実情をありありと描き出してくれるのでは、という期待がもともとありましたが、その期待通り、お話を受け、より仔細にわたりソマリアを把握することができたと感じました。具体的には、ソマリア支援を脅かす脅威の一つである「アルシャバブ」について、それが結成するに至る経緯から、現在現地においてどういった形でプレゼンスを発揮しているのかといった話や、ソマリア支援においてその存在を無視することはできない「クランツ」の実態についての話などをしていただきました。文献やインターネットを通してソマリアをただ調べただけでは、なかなか出会えないだろう情報の数々に、私はフィールドワークの面白さを実感させられたと同時に、ソマリアという国に内在する、宗教、文化といった諸々の軸が混線した状況に驚かされました。
 
続いて、シェルター担当のジェームズさんのお話をいただき、私はシェルタープログラムの最前線を窺い知ることができました。現在もなお進行中のプログラムにおける設計図などを見せてくださり、そこでの進捗、支援にあたっての苦労や工夫点についてのお話が主となりましたが、とりわけ印象に残ったのは、ゆくゆくはシェルターに居住する人々も人材に含めて、建設を進めているという点でした。こうした点からも窺える、より現地に即した形での支援のマネジメントに関心を抱くとともに、非常に月並みな感想ですが、私には普段の生活において安心して暮らせる住まいがあるという事実へのありがたみを再認識させられました。
 
最後に、サプライチェーン担当の金田さんから、調達から運輸に至るサプライチェーンが実際のマネジメントについてお話を頂きました。まず始めに、IOMの調達と運輸の対象は、企業や人材からサービスまで、予想を超えるかなり幅広い範囲をカバーしていることを伺い、驚かされましたが、サプライチェーンの一環を通して、透明性や信頼の確保をはじめとするビジネス倫理的な諸原則が根底にあり、これらが非常に重視されているというポイントには大きな衝撃を受けました。というのも、当初私は、サプライチェーンに関するお話は、どう物資を調達し届けるかという点に終始するのではと考えてしまっていたからです。もちろん私が予想していた論点についても、ソマリアという国で安全な運輸ルートをどう確保するのか、というトピックを通して議論が掘り下げられていきましたが、その活動の背景にある諸原則についてのお話を通して、調達と運輸とそのプロセスに対しより深い興味を抱くことができました。
 
以上の各スタッフの方々への訪問は、トータルで半日以上に及ぶ非常に濃密な時間となりました。日本国内でソマリアという国を知ろうと取り組んだ際には、なかなか手が届きがたいであろう情報の数々に、多角的な視点を通して触れ合う事ができたため、この経験を通して私は、海賊やテロリズムといったソマリアと関連づけられがちなイシューからさらに踏み込んだ次元で、ソマリアを考えることができました。また、そこでの支援の形、そしてその裏側で求められているものや、その根底にある考えなど、いずれもソマリア支援の最前線をその眼で見ているスタッフの方々からしか伺えないあれこれに、私は興味を惹かれ続けました。そして、スタッフのいずれの方々からもありありと感じられた仕事への熱意は、国際的な舞台で働くことへの私のあこがれを一層強くするとともに、私の描く将来のキャリア像にさらなる明確さ、具体性をもたらしました。この訪問はとても充実した体験として私の身に刻まれました。
 
最後になりますが、このような貴重な機会を与えてくださったIOMソマリア事務所のみなさん、とりわけ、諸連絡から綿密なスケジュールまで様々なあれこれを取り計らってくださった伊藤さん、並びにこの文章を読んでくださったみなさんに深くお礼を申し上げます。
ありがとうございました。