シエラレオネにおける防災事業

2018年4月

Iシエラレオネ コミュニティでの研修で作成したリスクマップ ©IOM 2018OMの防災・災害リスク削減(Disaster Risk Reduction - DRR)や環境悪化に対する活動は、2015年の第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組 2015-2030」の達成に貢献するものです。IOMは、リスクにさらされているコミュニティや移民、その他の困難な状況にある移動する人々に特に配慮した活動を行っており、以下の4点を目指しています。

  • 防止や準備の段階で人の移動の特質を生かし、災害によって引き起こされる避難を減少させる。
  • リスクを明らかにすることで、避難による影響を軽減させる。
  • 「より良い復興(build back better in recovery)」によってレジリエンス(強靭性)を強化する。
  • グローバルレベルでのリスク軽減の取り組みに、人の移動の視点を取り入れるためのパートナーシップの拡大と強化。

具体的な活動内容として、ハザードマッピングや、複合的被害リスク評価、コミュニティベースの災害リスク管理、計画的移住、レジリエンスのある生計手段の導入、早期警戒システム、防災政策・戦略の策定、災害への備え、危険を考慮した緊急対応などがあります。更に、防災に関する活動をインフラと社会システムの修復や生計手段・経済・環境の回復に統合し、より良い復興再建へつなげる活動も含まれます。
 
IOMは日本政府の支援により、防災及びレジリエンス強化事業を2017年3月からシエラレオネで実施しています。昨年8月に発生した洪水被災者に対する緊急支援の他、シエラレオネ政府災害対応当局の能力強化、及びコミュニティレベルでの災害に対するレジリエンス強化を行っています。
 
このシエラレオネでの防災事業の3つの活動を紹介します。

1.コミュニティ防災

シエラレオネ 研修受講者によるコミュニティでの啓発活動(カンビア郡ククナ) ©IOM 2018IOMは2017年11月20日から12月2日にかけて、プジョン、ケネマ、ボー及びカンビアの4郡において、コミュニティ防災の研修を実施しました。

シエラレオネは一年の半分(5月から10月)が雨季で、全国各地で大量の雨が降り続く他、暴風や雷雨等も発生し、また乾季には不用意な焼き畑等により引き起こされる火災も多数発生します。

IOMは国家安全保障局(ONS)及びシエラレオネ赤十字と共に、4郡20コミュニティより各6名ずつ計120人の代表を選抜し、コミュニティにおける災害への備えとレジリエンスを強化するため、防災に関する基礎知識を教授し、コミュニティにおけるリスク地図作成と早期警報システムの構築を行いました。

防災研修は殆どの人にとっては初めてであったこと、またコミュニティ・リスク地図作成及び早期警報システム構築については全く新しい内容であったことから、「大変ためになる。」、「他の人にも研修すべき。」、「コミュニティで共有したい。」とのコメントが多く聞かれました。

また、研修後12月から1月にかけて、参加者が学んだ内容をもとに各々のコミュニティでさらに6名の女性に対して研修を行い、先に研修を受けた6名と合わせた合計12名が1つのチームとなり、コミュニティで防災に関する啓発活動を行いました。12名は今後も継続的に啓発活動を行い、人々の行動の変化やコミュニティにおける防災とレジリエンス強化に貢献していくことが期待されています。

2.学校における防災教育

シエラレオネ 小学校での防災教育の授業で発表する生徒 ©IOM 2018IOMは2018年1月11 - 13日及び31日にかけて、首都フリータウンにある10の小学校31名の教員に対し、学校防災教育に関するワークショップを開催しました。

シエラレオネでは雨季(5月から10月)に全国各地で大量の雨が降り続きますが、フリータウンも例外ではありません。昨年8月には夜から大雨が降り続いた後、未明には大規模な土砂崩れと洪水が発生し、約500名が死亡し、約800名が行方不明、6,000人が被害を受けました。また人口が密集し水辺に近いフリータウンのスラム街では、洪水の他、火の不始末等による大火災も多発します。

シエラレオネ 第1回目の学校防災ワークショップ 学校防災指導要領を検討 ©IOM 2018シエラレオネは災害に非常に脆弱であるにもかかわらず、学校での公的な防災教育は行われていません。そこでIOMは、パイロット的な取り組みとして、国家安全保障局(ONS)と共同して学校防災にかかる教員用指導要領を作成し、その要領に基づきONSがファシリテーターとなってワークショップを実施しました。

ワークショップでは、まず防災に関する基礎知識を教授した後、先生方による教員指導要領のレビューと議論、同要領に沿った学校防災の模擬授業を行いました。3日間のワークショップを終えた先生方は、翌週より2週間各々の学校にて防災教育授業を実施し、その後再度開催されたワークショップに集いました。同ワークショップでは、先生方の防災教育授業の経験とそれに基づく提案を共有し、また各学校で行われた授業風景の写真やビデオをもとに、より良い防災教育の教授法等に関する議論を行いました。

参加校のうち、5校は昨年8月の災害で被害にあった地域にあり、また残りの5校も度々災害に遭っている災害多発地域にありますが、これまで学校防災の研修を受けた先生は一人もいませんでした。よって先生方の防災教育への関心は非常に高く、「この研修をもっと多くの学校、教員に対して行うべきだ。」「学校の同僚教員に学んだことを共有する。」との声が多く上がりました。また、「これまで様々な教育関係の研修を受けてきたが、実際に学校にモニタリングに来たり、その後のフォローアップがあったりするのは初めてだ。」とのコメントもありました。

更には多くの先生方から「シエラレオネにおける防災教育は非常に重要であり、今後とも是非継続していきたいが、規定カリキュラムがある中で追加的に実施していくのは難しい。よって、持続発展性を考えれば、防災教育を公的教育カリキュラムの一部として組み込むべきだ。」との意見が出ました。この提案は第2回ワークショップにて先生方より直接教育省担当者へ共有されています。

今後はこれらワークショップでの議論をもとに、教員用指導要領を改定し、先生方の提案を取り纏めた上で、ONS及び教育省に提出する予定です。

3.公衆衛生啓発活動と浄水施設に関する研修 - 日本の技術を活用

シエラレオネ 公衆衛生啓発活動の参加者が見守る中、手洗いを実践する村の子ども ©IOM 2018IOMは2018年2月2日にフリータウン近郊のマイル6にて公衆衛生啓発活動を、2月5日から10日には、プジョン、ケネマ、カンビアの3郡において、公衆衛生啓発活動と日本の技術であるポリグル社製品を活用した浄水施設に関する研修を実施しました。

IOMは2015年の洪水被害者が住むマイル6に浄水施設を建設し、去年8月国家安全保障局(ONS)及びコミュニティに施設を引き渡しました。その後、プジョン郡マンデマ、ケネマ郡フォインドゥ及びイバマ、カンビア郡マヤキに、それぞれ1基づつ浄水施設を建設しています。

シエラレオネ ポリグル製品を活用した完成間近の浄水施設 ©IOM 2018災害後に多発する感染症から人々を守るには、災害時にも影響を受けない安全な水を供給することが重要です。それと同時に、その病気がなぜ起こるのかを人々が理解し、自分の身を自分で守ることも大切です。IOMは水衛生省と共同で、浄水施設が完成間近な3郡4つのコミュニティに対し公衆衛生指導を行い、手洗いのデモンストレーション、砂糖と塩で作る簡易経口補水液の説明、コレラ防止に関する啓発活動等を行いました。これらの村では過去に公衆衛生指導がなされたことがなかったとのことで、村の人たちは水衛生省職員の指導を熱心に聞いていました。

公衆衛生指導後は、浄水施設の管理委員会メンバー10名と公衆衛生プロモーター10名に対し、日本ポリグル社の製品を活用した浄水施設にかかる研修をONSと共同で行いました。「ポリグル」と呼ばれるパウダーは水中の不純物を吸着させ、それをろ過することで水を浄化させることが出来ます。これまでにも、バングラディシュ、ソマリア、タンザニア、ケニア等でも利用されている日本の製品です。茶色く濁った水に少量のポリグルを入れ、数分間かき回した後にしばらく置いておくと、吸着した物質が沈み残りは透明な水となります。これを見た村の人々からは感嘆の声とともに、多くの質問が上がりました。また研修後には、浄水に必要となるポリグルや塩素、またポリグル製品のマニュアル等を村の長老に贈呈しました。

浄水施設完成後は各村10名の管理委員会が中心となり、安全な水の供給と施設の維持管理を行っていくこととなります。IOMは持続可能な運営が行えるようモニタリングを行い、引き続きコミュニティを支援していきます。

シエラレオネ 国家安全保障局職員によるポリグル製品を活用した浄水プロセスの説明 ©IOM 2018