ケニア事務所でのインターン体験 2018年8月

熊谷香穂
(インターン期間: 2018年6 - 8月)

IOMでのインターンを希望した背景

幼い頃から日本を含め6か国に居住してきたため、「人の移動」について興味を持つことは自然なことでした。私も日本以外に住んでいる時は、移民の一人であり、引越しをする度に新しい環境に馴染む努力が必要でした。元いた場所を離れるということは、人生における挑戦であり、必ずリスクが伴います。移動した先の社会(学校や職場等)にうまく馴染めず孤立してしまったらどうしよう、という不安は必ずあり、移動先で頼れる人が少ない移民という存在は弱い立場に置かれがちです。一方で、移動した先で友人ができ、地元の文化に溶け込み、生活できるようになった際に得られる喜びと学びは、何にも変えがたいものがあります。こうした経験から、移動することにより人生をより豊かにしようと挑戦する人々の力になる取組を幅広く行っているIOMに身を置きたいと考えるようになりました。幸いにもケニア事務所とご縁があり、インターンをすることとなりました。

業務内容

私が配属された部署は、Immigration and Border Management Unitという国境管理に関する事業を運営する部署でした。「国境管理」と一言に言っても、人身取引対策、治安維持、出入国管理等、様々な要素が含まれます。どの職員も複数のプロジェクトを掛け持ちし、同時進行で運営しているような多忙な部署に配属されただけに、短い期間でのインターンでしたが、かなり幅広く複数のプロジェクトを経験させていただけたように感じています。

以下に、本インターンで携わった業務内容の代表的なものを紹介します。

国連中央緊急対応基金(CERF)の非食料物資の配給事務

配給された物資 ©IOM 2018(筆者提供)
配給された物資 ©IOM 2018(筆者提供)

2018年年5月、ケニアでは大雨による大規模な洪水が多発しました。これにより避難をすることとなった人々に対し、緊急支援として非食料物資の配給をIOMが行うことになりました。その配給を行う物資を被災地域に届けるための書類作りや送付後の報告書の一部作成等を担当しました。IOMではないのですが、以前にUNHCRのファンドレイジングをしていたことがあり、寄付金の用途の例として緊急支援物資を届けることも説明していたため、実際に支援物資が現場に届いているのを見ると、感慨深いものがありました。

 

 

国境管理能力強化トレーニングの運営

トレーニングにて、国境管理の課題について協議している様子  ©IOM 2018(筆者提供)
トレーニングにて、国境管理の課題について協議している様子  ©IOM 2018(筆者提供)

IOMはケニア全土にある出入国を管理する国境地点の国境管理能力強化のためのトレーニングを提供しており、そのうちのひとつであるケニア沿岸部の国境向けのトレーニングの運営に私は携わりました。このインターンでの初めての出張は、ウクンダという海の美しい町でした。

2014年に国家安全法が改定され、国境管理に関わる全ての機関が一丸となって国境管理をするように方向転換がなされました。そのため、本トレーニングには、出入国管理部門の職員はもちろんのこと、警察、港湾、漁業、保健等の分野の担当者も招かれ、各アクターがチームとして協力することで国の安全を守ることを目指すものでした。トレーニングの内容は、ケニアの国境管理政策と方針、テロ、人身取引、不法入国、密輸、効果的なチームビルディングなどを含む包括的なものでした。私はインターンとして運営に携わりながらも、参加者と共にケニアの国境管理に対する政策、関わるアクター、取り組み状況、課題などについて理解を深める良い機会となりました。

 

人身取引反対世界デーの4つのイベント企画・運営

女性フォーラムのディスカッションの様子 ©IOM 2018(筆者提供)
女性フォーラムのディスカッションの様子 ©IOM 2018(筆者提供)​​​​​

7月30日の人身取引反対世界デー(World Day Against Trafficking in Persons)に合わせ、IOMケニア事務所では人身取引の拠点の一つとなっているケニア沿岸部で、以下の4つのイベントを開催しました。

女性フォーラム: 沿岸部の女性(政治家、起業家、アーティスト等)を集めて身近に起きている人身取引についての情報共有や女性としてできる人身取引対策について話し合うフォーラムを開催しました。

 

 

 

サッカーイベントの優勝チームと©IOM 2018 (筆者提供。左から3人目が本人)
サッカーイベントの優勝チームと©IOM 2018 (筆者提供。左から3人目が本人)​​​​​​

サッカーイベント: ケニア沿岸部では12歳から35歳の若者が最も人身取引の被害に遭いやすいとのことがIOMケニアが実施した調査で判明しているため、ケニアで大変人気なスポーツであるサッカーを通して若者向けに人身取引の啓発を行うイベントを開催しました。

 

 

 

 

 

タレントショーの様子 ©IOM 2018(筆者提供)
タレントショーの様子 ©IOM 2018(筆者提供)​​​​​​

タレントショー: 主に若者をターゲットとし、クワレ地方の若者が人身取引をテーマにした歌・ダンス・演劇を通して競い合うイベントを開催しました。タンザニア国境の村ルンガルンガで開催し、約800名の観客を集めた大規模なイベントとなりました。
調査レポートの発表:  IOMが実施したケニア沿岸部の人身取引の現状調査レポート(Assessment report on the human trafficking situation in the coastal region of Kenya)の発表及び政策提言を政府や市民団体などを招き実施しました。

4つのイベントの企画・運営を通して、ケニア国内でも沿岸部の文化に合わせてイベントを企画する必要があることを学びました。これは、現地の人と共にひととおり企画・運営を経験してみないと分からないことだったため、私にとって大変貴重な経験となりました。例えば、歌やダンスが好きな沿岸部の人々にあわせ、女性フォーラム、タレントショー、調査レポートの発表において演劇を用いて人身取引の現状と対策について噛み砕いて発信するという方法が、今回は大変効果的であったと感じています。

一方で、ケニア沿岸部では観光業の延長や悪質転職業者を気付かないうちに利用してしまうことにより、人身取引が起きているという現状も分かりました。人身取引による人権侵害を防ぐためにも、安定的な雇用の創出と、雇用者や若者への継続的な啓発が重要であるということを、これらのイベントで実施されたディスカッションを通して再確認しました。丁度インターンの時期と人身取引反対世界デーが重なったため、イベントの企画・運営を通してケニアの人身取引の状況について多角的に学ぶことができたと実感しています。

 

調査レポート発表の様子 ©IOM 2018(筆者提供)
調査レポート発表の様子 ©IOM 2018(筆者提供)

感想と今後に向けて

このインターンを通して、会議や出張などに参加し、日本や先進国で仕事をしていてはあまり交流のなかった人々と出会い、課題解決に向けて活動することができました。また、様々な国際機関でのキャリアを持つ同僚の方々と日々交流することで、将来設計のアイディアを得ることもできました。今の私にとって、このインターンに参加したことは、とても良い経験だったと思います。実現してくださったIOMケニア事務所の方々には大変感謝しております。
そしておそらく、人類が存在する限り移民はいなくなりません。人はよりよい生活を求め、移動します。そういった挑戦をする人々が危険な目に遭ったり、悲しい思いをすることができる限りないようサポートできたら良いと考えています。インターン終了後の9月からは英国の大学院に進学し、移民政策を学ぶ予定です。大学院で知識を深めた後は、IOMの職員としてまた戻ってこられたら素敵だなと思います。