中東・北アフリカ地域事務所インターン体験記 2019年11月

水野美結
(インターン期間: 2018年11月-2019年8月)

私は2018年11月から2019年8月まで国際移住機関 中東・北アフリカ地域事務所(エジプト カイロ)でインターンシップを行いました。私のインターンシップでの経験を、1.応募した理由、2.経験したこと、3.振り返り、4.今後インターンシップへ取り組む方へのメッセージの四項目に分けて以下のようにまとめました。

 

インターンシップに応募した理由

私は看護師として3次救急病院の救急病棟で働いていました。以前から国際機関で移民・難民が社会・文化的に受け入れやすい医療を受けることができる社会つくりに貢献したいと考えていたため、その実現に向けてオーストラリア国立大学の修士課程に進学し、医療人類学を学びました。最終セメスターが始まる前の休暇に就職活動を行うなかで、国際機関や国際協力機構(JICA)、開発コンサルタントなど国際保健分野での経験を積めるポストを探していました。たまたま国連フォーラムのメーリングリストでこのインターンシップの募集案内を発見し、このポストは自分が今まで学んできたことやこれから行いたいことに合致していると考え応募しました。海外で修士号は取得しましたが、海外での就労経験は無かったため、少し不安でしたが直属の上司になられる方が日本人ということもあり、勇気を出して応募してみました。将来的には上記に掲げた目標を達成するために、Junior Professional Officers(JPO)試験を受けて国際機関職員になりたいと考えていたため、

  1. 国際機関は日常的にどのような仕事を行っているのか、
  2. 自分が今後国際機関職員を目指すにはどんな能力が必要なのか、
  3. 医療人類学の知識や技術を活かしていく方法はあるのか

について学ぶことを今回のインターンシップの目標としました。

 

(筆者提供)

 

インターンシップで経験したこと

初めて国際機関で働く人にはありがちなことだそうですが、略語(IOM: International Organization for Migration国際移住機関、SDGs: Sustainable Development Goals持続可能な開発目標など)がとても多く、はじめは非常に戸惑いました。また、前にも述べましたが海外での就労経験がなく、英語でビジネスメールを送った経験もなかったため、日々受け取るメールの中から使いたい表現を抜き出して保存・活用していました。

実際の業務内容については、Regional Migration Health Specialistの下で、シリア、イラク、イエメン、リビア、スーダンなどを含む中東・北アフリカ地域の保健事業の支援業務の補佐を行いました。具体的には地域内で行われているIOMの保健事業のデータ(開始日・終了日・予算・ドナーなど)を計画書やイントラネットから抜粋し、取りまとめる作業を行いました。各保健事業の予算の消化具合について月に一度更新し、地域内の保健事業の進捗状況を確認しました。また、中間・最終レポートの締切や提出状況を確認しました。地域内の国事務所が実施している保健事業の計画書やドナーへの報告書を閲覧し、アドバイスすることも地域事務所の重要な業務です。さらに、複数の国や複数の国際機関が参加する保健関連事業の会議に参加し、議事録を作成しました。

保健関連業務以外では、Regional Monitoring and Evaluation M&E Officerの補佐を行いました。中東・北アフリカ地域で行われたIOMの事業の質の評価を行うために、事業計画書から情報収集を行い評価をし、分析作業につなげました。また、「根拠に基づいた事業計画の立案」に関する研修の実施レポートを、参加者のアンケートや開始前・終了後に行ったテスト結果から分析し作成しました。さらに、2019年8月末に横浜で行われた第7回アフリカ開発会議(The Seventh Tokyo International Conference on African Development: TICAD VII)の準備チームにも参加し、Regional Media and Communication Officerと共に、展示で使用するバーチャルリアリティーの日本語吹き替えや現役JPOの活動紹介ビデオの制作を行いました。

元看護師として、また医療人類学者として、直接裨益者とかかわりながら援助を行いたいと感じていたこともあり、国事務所の活動にも積極的に参加させていただきました。保健事業の担当者に連絡を取りIOMの保健施設における渡航前健康診断の様子を見学して、移民の方々と直接言葉を交わすことができました。シリアやスーダンなどの紛争国から逃れてきた移民が多かったですが、中には円滑に移住のための手続きが行えるという理由でブラジルから検診を受けに来ている家族もおり、様々な背景を持った人がIOMの裨益者になることを学びました。国事務所の保健部門にある面談所では、エジプト国内における保健課題やIOMエジプト事務所が行っている保健事業について詳しく話を聞くことができました。日本で暮らしているとあまり想像ができませんが、エジプト国事務所には毎朝たくさんの移民が経済的支援、生活物資の支援、高度な医療機関にかかるための医師の診察を受けるために集まります。

渡航前健康診断の手順について
渡航前健康診断の手順について(筆者提供)

地域事務所ならではのイベントや研修にも参加させていただきました。Global Migration Film Festival 2018の閉会式がカイロで開かれたため、ノルウェー大使館での上映会の補佐、閉会式準備や当日のゲストの案内を行いました。閉会式に参加するためにカイロを訪れたヴィトリーノIOM事務局長の受け入れ準備チームにも参加しました。IOM本部、地域事務所、中東・北アフリカ地域内の各国事務所代表が参加する会議や、ドナー国に対する活動報告会の準備や、議事録作成、進行補佐を行いました。

Director Generalと集合写真(筆者は写真中央、DGの向かって右後ろ)
ヴィトリーノ事務局長と集合写真
(筆者は写真中央、事務局長の向かって右後ろ)
(筆者提供)

地域事務所なので国事務所では行われていない研修にも参加することができました。インターンという立場ではありましたが、研修担当者に参加したいという意思を示せば、他のスタッフと同様に受け入れてくれました。以下に、その中の3つの研修について紹介します。まず、Prevention of Sexual Exploitation and Abuse PSEA trainingですが、タイトルの通り性的搾取や性暴力を予防するためのIOM独自の研修です。IOMの職員は移民に対して直接的に経済的・物的支援を行う機会があるため、国際機関職員という立場やそれに付随する権力を理解し移民の方々に接する必要があります。次に、Project Development and Implementation PDI trainingでは、IOMの事業立案・計画・実施・評価のプロセスや、根拠に基づいた事業計画の立案を行うための知識を身に着けました。3つ目のSafe and Secure Approaches in Field Environments SSAFE and Individual First Aid Kit IFAK Courseは紛争地域で働く国連職員のための研修です。紛争地域で想定される危険やそれから身を守るための方法について、また、命に関わるけがを負った際の応急処置の方法について学びました。研修最終日にはエジプトの警察学校の協力を得て、防弾チョッキを着用して誘拐や強盗などのケースシナリオに臨みました。どの研修にもグループワークがあり、いろいろな研修に参加すればするほど、同じ事務所で働いているスタッフの人となりをより知ることができたり、他の国や他の国際機関で働いているスタッフと情報交換ができ、IOM・国連というチームとして一体感がわくのを感じました。

トレーニング、グループワークの様子(写真右から2番目が筆者)
トレーニング、グループワークの様子
(写真右から2番目が筆者)(筆者提供)

SSAFE and IFAKトレーニングの様子(左から2番目が筆者)
SSAFE and IFAKトレーニングの様子
(左から2番目が筆者)(筆者提供)

 

地域事務所には、経験年数10年以上のシニアスタッフが多かったですが、中には同年代のエントリーレベル(インターン・UNボランティア・JPO・アングレーデッドなど)のスタッフもいたため、日常的にランチを一緒に食べたり、週末には一緒に買い物やお茶に出かけたりして、互いの出身国での国際機関の働きや一般的なイメージ、国際機関でのキャリアについて情報交換をしたり、応募書類の添削やアドバイスをもらうこともできました。また、地域事務所にズンバの公式インストラクターが二人いたため、週2回から3回は仕事のあとに事務所の会議室でズンバのレッスンを受け、デスクワークで凝った体をほぐすことができました。レッスンに参加することで、国事務所・地域事務所のスタッフと交流することができ、業務を円滑に進める上でもとても良いコミュニケーションの機会だったと思います。

インターンシップを行う中でとても強く感じたことの一つは、ナショナルスタッフ・インターナショナルスタッフの違いや、仕事のことやプライベートなことに関わらずスタッフ同士のコミュニケーションがよく取れていて、お互いに助け合おうという気風があるということです。今までは、人に迷惑かけずに何事もまずは自力で何とかする、自力での実行が難しそうなら諦めるしかないと思って生きて来ましたが、(私が頼りなく見えたのか)周囲のスタッフは常に私のことを気にかけてくれていると感じましたし、なんでも困ったことや興味があることを相談すれば喜んで助けてくれました。何気ない会話の中でもいろいろなことを気軽に相談できるとてもいい環境だったと思います。

 

事務所で開かれたラマダン明けの食事の様子
事務所で開かれたラマダン明けの食事の様子
(筆者提供)

 

インターンシップを振り返って

インターンシップ前に目標にしていたIOMの働きや役割、国連の働きや国際機関の相互の関係性などについて理解することができたと感じています。インターンシップ期間中にスイスのジュネーブにあるIOM本部やIOM駐日事務所を訪問させていただく機会もあり、地域事務所よりさらに広いグローバル規模の事業監理や、IOMが日本政府と行っている取り組みについても学ぶことができました。日本人が少ない国でのインターンシップだったので、カイロ在住の邦人国際機関職員や国際協力機構JICA)職員・ボランティア、日本大使館職員とのネットワークつくりを行えたことはとても有意義だったと思います。IOMのみならず、移民関連の事業を行っている国際機関はあるので、コンサルタントの仕事を紹介してもらったりして次の仕事につながる可能性は大いにあると感じました。また先輩インターン、現役JPOJPO経験者から直接話を聞く機会にも恵まれ、日本人JPOに求められる人材や能力について理解を深めることができたと感じています。このインターンシップを通じて得た人脈や皆さんからいただいたアドバイスがあったからこそJPO初挑戦で2次試験まで進むことができたのだと感じています。

IOMの地域事務所の事業の中で医療人類学をどのように活かすことができるのかについては、明確な解は得られませんでした。国事務所・地域事務所の保健担当の職員は医療人類学には非常に興味を持ってくれてはいました。もっと現場での調査経験や公衆衛生活動の中で医療人類学を活かした経験があれば、IOMの国事務所・地域事務所の活動で活かしていくアイデアが浮かんだのかもしれないと感じています。また、自身の今後の進路に関して、医療人類学者として移民・難民の保健問題に対して国連レベルでアプローチしたいのか、もっとローカル・コミュニティレベルでアプローチしていきたいのか、もしくは学術的な立場から貢献したいのかについて改めて考えるきっかけになりました。

 

これからインターンシップに取り組む方へ

筆者の送別会の様子
筆者の送別会の様子(筆者提供)

私も先輩インターンから頂いた言葉ですが、IOMはインターンだからと言ってコピー取りにはしません。やりたいと意思表示すればやらせてくれるし、評価もしてくれると感じました。インターンそれぞれで期間内に経験できることは違うと思いますが、なんでもやりたいことや、アイデアは発信して、興味があることにはきちんと意思表示していろんな経験を積めるといいと思います。皆さんおっしゃいますが、国際機関によって、地域によって、国によって事務所の風土は様々ですし、向き不向きもあると思います。今回ここに書かせていただいたことはほんの一例ですが、これからインターンシップに取り組む方の参考になればうれしいです。