人間の安全保障

「人間の安全保障」は、一人ひとりの個人の保護と自立のための能力強化に重点を置いた人間中心の視点に立ったアプローチであり、IOMは人身取引対策、復興や平和構築に関連した避難民への支援、移民の保護と能力強化、移住問題における国際・地域協力を通じて、「人間の安全保障」の理念の実践を進めています。

「人間の安全保障基金」は、1999年3月に日本政府の主導により国連に設置された信託基金ですが、IOMは他の国際機関と協力して実施した以下の活動に対し、同基金の支援を受けました。
 

コスタリカ 移民への健康診断 Live Images. Prog. Conj. Seguridad Humana. 2013ボスニア・ヘルツェゴビナ (2013-2016)

第十県(Canton 10)において、以前に難民や国内避難民だった住民を対象に、社会統合を支援しています。IOMは国連諸機関、地方政府などとの緊密な協力のもと、地方政府の支援担当者の能力向上を支援し、彼らを通じて、教育による差別や紛争の防止、地雷・不発弾等への対応、平等な就業機会・所得創出・職業訓練の提供などを行い、ひいては国全体の安定を目指しています。

メキシコ 期待に胸をふくらまし移動する移民たち(イメージ) 移動途中には多くの困難があり、彼らは保護を必要としている ©UNFPAコスタリカ (2013-2016)

コスタリカとパナマにいるンゴベ・ブグレ族の、主にコーヒー農園で働く短期移民をターゲットとしています。彼らが最低限の生活レベルを維持して自立できるように、食糧の自給や余剰生産物で利益を得ることを目指した移民へのトレーニングや、関係政府機関職員へも同様の活動の普及のための研修を行います。また、移民の人権と健康を守るため、移民自身と雇用者などの受入コミュニティへの啓発活動と具体的な支援サービスの提供を行います。同時に、移民の権利を保護して彼らの社会的境遇を改善するために、適切な政策の形成を支援します。

エジプト 2011年の革命の影響を受けたミニヤ県で 雇用創出と住民の経済的自立を促進する活動を実施 © IOM 2014メキシコ (2013-2014)

メキシコ南部では、目的地に移動途中の移民がさまざまな困難にさらされています。IOMは国連諸機関とともに、政府機関、そして市民団体へ能力向上の支援を行い、これらの機関を通じて、シェルターなどの施設を拡充させ、移民の保護が可能となるようにします。また、受け入れコミュニティと移民との平和的な共存のために、啓発活動や対話を通じ、移民の保護への協力体制を促進します。

エジプト (2013-2016)

IOMは国連諸機関、地方政府、市民団体と協力して、ミニヤ県内の町村で、地域住民への雇用の創出と能力向上の支援を行い、住民の経済的安定と自立の促進に努めています。2011年の革命によって影響を受けた、失業した若者、貧困層の女性、そして観光業などの民間セクターの縮小によって困窮した家庭などを、直接的に支援します。この事業により、少なくとも18,000人が経済的により自立することが見込まれています。

ニカラグア (2012-2015)

アルト・ワンギー・ボカイ地域では、政治的な、また異文化間の問題が以前から存在し、近年では土地所有権や環境保護をめぐりメスティーソ(混血)の農家と先住民との対立が顕著となっています。こうしたことから、女性や青少年、子どもが暴力を受けていることに加え、先住民コミュニティへの差別や不当な待遇といった問題が見られます。IOMは国連諸機関とともに、経済的自立のための生計向上支援、性的暴力と家庭内暴力の被害者へのケアと保護の包括的なシステムの確立、リプロダクティブ・ヘルスなどの保健医療支援、環境問題への啓発活動、地方政府の能力向上による人権の保護の促進、公的教育の質の向上などの活動を行って、他地域や外国への労働力の流出を防いでいます。

ケニア (2012-2015)

非常に厳しい環境で生活するトゥルカナの国境地域の遊牧民コミュニティは、多様な危険にさらされています。IOMは国連諸機関と協力し、自然災害などの脅威に直面する人々の対応力の強化のために、生計向上、食糧安全保障、教育、保健の各分野への持続可能な支援を行っています。また、研修や共同マーケットの設置や商取引の機会を増やすことで、コミュニティ間の平和的な交流を増やし、紛争の防止に努めています。

ケニア 生計向上支援の一部として、IOMとFAOは協力して ビニールハウスを建設

 

ケニア UNICEFが遊牧民の子供たちへの基礎教育支援を行う

 

ケニア 若者たちへ生計向上のための起業についてのトレーニングを行っている ©IOM2014

インドネシア (2011-2013)

政府の人身取引対策を支援するため、インドネシアや被害者の目的国・経由国で政府関連機関や市民団体、医療機関などのキャパシティ・ビルディングを行いながら、被害者の保護とエンパワメント、人身取引の防止に努めます。IOMはUNFPA、WHOと協力し、多くの被害者や移民の出身地とされる西ジャワ、西カリマンタン、西ヌサトゥンガラの3州を中心に活動を実施します。

タイ (2009-2014)

タイ北部のミャンマーと国境を接するメーホンソン県は、山がちでアクセスが難しく、開発支援が届きづらい状況にあります。貧困の割合は高く、移民、難民を含めて多くの民族が暮らしています。IOMは同県で、FAO、UNIDO、UNFPA、UNDP、UNESCO、UNHCR、WHOなどと協力し、貧困の削減と所得創造や天然資源の持続的管理、基本的な社会サービスへのアクセスの改善などの活動を行い、国際機関間の協力プロジェクトのモデルケースを目指します。

モルドバ キシニョフの被害者支援センターでは まず被害者への心理カウンセリングを行う  (イメージ)© IOM Moldova 2008モルドバ (2008-2011)

特に女性に対する人身取引と家庭内暴力に対処する活動を、国連開発計画(UNDP)、国連人口基金(UNFPA)、欧州安全保障・協力機構(OSCE)と協力して実施しました。被害者を直接支援しながら、同時に国内の支援ネットワークの強化を図り、人身取引や家庭暴力についての啓発活動を行いました。

エチオピア (2006-2008)

ソマリ州では、旱魃や紛争の影響で、多くの人々が故郷を追われ他の部族の居住地への移住を余儀なくさせられてきました。IOMは国連開発計画(UNDP)、国連児童基金(UNICEF)、および国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と共同で、国内避難民やソマリアからの難民を受け入れているソマリ州のコミュニティの開発を支援すると同時に、将来的に国内避難民が故郷へ帰還しやすい環境を整えることを目的に事業を実施しました。具体的には、マイクロクレジットや貯蓄制度の整備など、収入源を多様化させるための活動、保健サービス、安全な飲料水、初等教育などの基礎的な社会サービスの提供、国内避難民の地域社会への統合を支援するためのワークショップの開催、植樹や公衆トイレの導入による難民受け入れ地域の環境や衛生状態の改善などを行いました。

タイ 移民の子どもたちにポリオの予防接種を行う © IOM 2008タイ (2005-2009)

移住者とその家族の健康状態改善のための支援を、世界保健機関(WHO)、及びタイ政府保健省と協力して実施しました。
ラノーン県及びサムットサコーン県は海沿いの海産物加工業などが盛んな地域で、多くの不正規移民が暮らしています。そのほとんどはミャンマー出身で、タイの健康保険制度に加入していない移民も多くいます。この事業では、移民を対象とした移動クリニックの運営や予防接種、啓発活動の実施、政府機関のキャパシティ・ビルディングなどを行いました。