バングラデシュ コックスバザールで支援を待つ女性や子ども。今や100万人の難民が暮らす
©IOM 2018. Photo by Olivia Headon
国連機関とNGOのパートナーはこの程、ロヒンギャ難民約90万人や、困難な状況にあるバングラデシュの受入コミュニティの住民33万人以上の緊急のニーズに応えるため、9億5,100万米ドルの支援を国際社会に呼びかける『2018年版ロヒンギャ人道危機共同対応計画』を発表した。
ロヒンギャ難民の流入が始まって数カ月が過ぎ、ピーク時には一日数万人が陸路や海路でミャンマーから逃れ、世界で最も速いペースで拡大した難民危機となっている。昨年8月25日以来、67万1,000人のロヒンギャ難民がバングラデシュに避難した。バングラデシュ政府とバングラデシュの人々は、非常に寛大に善意をもって、こうした人々を受け入れた。
7カ月近くが経ってもミャンマーからの難民の到着は続いており、コックスバザールの状況は不安定だ。クトゥパロン・バルカリキャンプには、60万人の難民が身を寄せているが、これは世界で最も人口が密集した難民キャンプだ。難民にとって不安定な状況や現状の緊急支援は、モンスーンの季節や雨が近付いていることから、更なる課題が山積している。15万人以上のロヒンギャ難民が地滑りや洪水の危険のある場所に滞在しており、現状の危機に加え更なる災害が起こり得る。
3月16日、スイス・ジュネーブにおいて、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官、ウィリアム・レイシー・スウィングIOM事務局長、ミア・セレッポ 在バングラデシュ国連常駐調整官が2018年版のロヒンギャ人道危機に関する国際社会へのアピールを共同発表した。その目的は、現場の数々の課題に対応するため、100以上の国連機関や現地・国際NGOの必要不可欠な努力を結集させることに加え、バングラデシュ政府による支援努力と協調しながら、難民及び受け入れコミュニティが、必要な救命活動や保護、支援を確実に受けられるよう国際人道支援を推進することにある。
「我々は、寛容にも門戸を開いてくれたバングラデシュのコミュニティや、この危機の以前からも世界で最も軽んじられて危険な状態にあった無国籍の人々や難民の喫緊の課題について、訴えています。」と、グランディ国連難民高等弁務官は述べた。「この危機の解決策はミャンマー国内にあり、難民が帰還できるような環境を整えなければなりません。しかし我々が今、まさに協力を求めているのは目前にあるニーズに対してです。こうしたニーズは膨大です。」
このアピールは2018年末まで、難民と受入コミュニティの差し迫った人道的ニーズに応え、環境に配慮した持続可能な解決方法、信頼醸成、そして影響を受けた人々のレジリエンス(強靭性)を支援することを目指している。これには、向こう数ヶ月に予定されている追加8万人のロヒンギャ難民への緊急時対応計画も含まれている。
「ロヒンギャ難民のバングラデシュでのニーズや困難は膨大です。」とスウィングIOM事務局長は言う。「多くの政府が、前回のロヒンギャ危機へのアピールに寛大に応えてくれました。危機の規模の大きさや生命が尊厳とともに守られるために必要な人道的援助の大きさを考えると、更なる支援が引き続き不可欠です。」
ニーズは差し迫っている。寄せられた資金は、難民と受入コミュニティ双方の救命活動、そして緊急の人道支援ニーズに応えるために使用される。アピールの半分以上(54%)は、食糧、水・衛生、シェルターやその他の基本的な支援に使用される。食糧のニーズだけで、全体の25%を占めている。
ロヒンギャ難民のために、一日1,600万リットル以上の安全な水、及び毎月1万2,200トンの食糧が必要とされている。そして、少なくとも18万世帯の難民が調理用の燃料を必要としており、5万基のトイレの建設と維持が必要で、最低限30カ所の下水処理施設が必要とされている。
また、プライマリー・ヘルス・センター43カ所とヘルス・ポスト(診療所)144カ所が必要とされている。教育への適切なアクセスために、61万4,000人の子どもたちや若者のための追加の教室5,000室が必要。そして、栄養治療センター100カ所や、14万4,000人のシングルマザーとその家族、リスクにさらされた2万2,000人の子どもたちのための保護プログラムも、緊急の優先課題だ。難民及び受入れコミュニティのおよそ40万人の子どもたちは、トラウマ・ケアとそれに関連した支援を必要としている。
「支援活動に寛容にも資金が集まったことに対して、大きな感謝が寄せられています。しかし一つ忘れてはならないのは、この危機の最大のドナーはバングラデシュであるということです。」と、ミア・セッポ在バングラデシュ国連常駐調整官は言う。
「現場の第一の対応者として、土地を提供し、国境を閉鎖することなく、庇護を与え、道路を建設し、送電システムを延長し、食糧を提供し、自国の公務員を出向させ、キャンプの秩序を維持するために警察や軍を出動させています。この危機に対する一番のドナーは、これからもバングラデシュの国民と政府です。」
バングラデシュでの人道支援は、数々の課題に直面している。混雑した環境で、週に数百件もの性暴力の発生が報告されている。はしかやジフテリア、下痢など、公衆衛生の悪化に対する懸念は差し迫っている。
コックスバザールでのロヒンギャ難民の状況は、喫緊の人道危機で、生命を救い基本的な支援を提供するために緊急の資金が必要とされている。これまで、2017年9月から2018年2月までの緊急活動に対しては、74%の資金が提供された。(要請した4億3,400万米ドルに対して3億2,100万米ドル)。